(本記事は、長尾義弘氏の著書『老後資金は貯めるな!』、河出書房新社、2018年12月5日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
※以下、書籍より抜粋
老後の人生に最適な資金は何か?
老後生活において「最適な資金」は何だと思いますか。
投資信託? 運用利回りがいい商品? いいえ、違います。
じつは、「年金」が最も優れた資金なのです。
年金は生きている限り、決まった金額をずっと受け取ることができます。
これが最大のポイント。
定期的にお金が入ってくる状態は、大きな安心感につながります。
働いている間は毎月給料をもらえましたが、老後の収入は年金だけになります。
もっとも、それでは足りないので、不足分を貯蓄から取りくずすことになるわけです。
だったらなおさら「貯蓄を増やさなければ」と思うかもしれません。
しかし、目減りしていくお金が目減りしていくというのは不安があります。
ここは発想を逆転させてください。
出ていくお金を増やすのではなく、入ってくるお金を増やす。
最適な老後資金である年金が十分に得られれば、減り続ける残高に怯おびえる必要はなくなります。
もちろん、座して待っていても年金は増えません。
そのベースをつくるために、貯蓄を有効活用するのです。
「年金制度は崩壊しかねない」は本当か
日本は、原則的に国民全員が年金に加入しています。
原則60歳未満の人が払う保険料で、65歳以上の高齢者を支えるしくみです。
1970年は、20歳~64歳の8.5人で1人の高齢者を支えていました。
ところが、日本は先進国の中でも類を見ないほど、少子高齢化が急速に進んでいます。
2010年には、2.6人で1人の高齢者を支える構図に変わりました。
さらに、高齢化がピークを迎える2050年には、1.2人で1人を支えるという、まるで肩車のような状態になります。
その後は高齢化も落ち着くと予測されています。
こう聞くと、「年金って危ないんじゃないの?」と疑いたくなるかもしれません。
年金制度は崩壊するのではないかといったコメントもよく耳にするため、懸念をいだく人が多いことも承知しています。
しかし、現状では年金制度が崩壊するとは考えにくいと思います。
4人に1人が受け取っている年金の崩壊は、国民生活の崩壊になりかねないからです。
年金制度の廃止に手をつけるより、ほかの公共事業などをやめるほうが先でしょう。
どうしても年金制度をやめざるを得ないとなったら、それは日本国そのものが危機的状況に瀕していることを意味します。
さすがに、その確率は限りなく低いですよね。
もっとも、崩壊はしなくても、じょじょに縮小される可能性はあります。
国が全面的に面倒を見る制度から、
「個人個人で考えてください。そのかわり、サポートはします」
という制度にシフトしていくでしょう。
実際、その兆しは現れており、2016年にスタートしたiDeCo(イデコ)はそうした考え方に基づいています。
とはいえ、年金制度が老後生活の大きな資金源になることは変わりありません。
考えてもみてください。
自分の力だけで、65歳から1億円近い資金を用意できますか。
その多くは年金に頼ることになります。
年金制度は何度も改正を繰り返しているため、とても複雑になっていますが、これを理解し、有効に使っていけば、ひじょうにお得なのです。
はっきりいいます。
年金制度は、簡単に崩壊はしません。
ぜひ、この制度を賢く使いこなして、豊かな老後生活を獲得しましょう。