そういえば、人々が怒りまくったのが2022年、山口県阿武町で発生したコロナ対策の臨時特別給付金の誤給付騒動だった。町役場が町民全員分の4630万円を当時24歳の無職の移住者男性に振り込んでしまったのだ。男性はオンラインカジノで使おうとし、給付された口座とは別の口座に移すなどした。
結果的にこの男性は町から訴訟を起こされ、電子計算機使用詐欺罪で懲役3年、執行猶予5年の判決が出た。この騒動発覚後のテレビとネットの糾弾っぷりはすさまじいものがあった。そしていかにこの男性が「クズ」であるかを解説するのである。移住者に付与される定住支援金を獲得したうえで引っ越してきたのに仕事をせず、地元の人とも交流しないことに加え、イケメンだったことすら叩きまくった。
もはや「叩きたいだけの群衆心理」とでもいえ、毎日何かに怒り、文句や批判を述べなくては落ち着かなくなっているのだ。2億円トイレにしてもどうせ万博が始まったら「アメリカ人が『このトイレはクールだね。ワーオ、シャワートイレ、私も家に欲しいよ』と万博のトイレを絶賛」なんてコタツ記事が出るんだろうね。その頃には怒ったことも忘れて別の何かを叩いているのだろう。
(文=中川淳一郎)