いったん嫌われると、やることなすことに叩きが始まるのは東京五輪でも同様だった。もともと新国立競技場の建築予算は1300億円だったが、故ザハ・ハディド氏デザインの競技場が2520億円と倍増するということから批判が殺到。再コンペを行い、隈研吾氏によるデザインが採用された。それでも1569億円だ。だが、ザハ氏案よりは安いからか、はたまた本番が迫っていたからか、批判はそれほどなかった。

 しかし東京五輪への“ケチ”が続く。森喜朗氏が舌禍で組織委会長を辞任したり、開会式の音楽を担当する小山田圭吾氏が過去にいじめをしていたことが問題視され、降板。演出担当の小林賢太郎氏も過去のコントが差別的だと解任された。パラリンピックも総合演出の佐々木宏氏が渡辺直美を豚にする「オリンピッグ」とLINEグループで書いていたことから降板した。

 結局1年遅れで大会は開催されたが、開会式がピクトグラム以外は退屈だったとの評もあったし、IOCのバッハ会長は「ぼったくり男爵」と呼ばれ忌み嫌われた。銀座を歩いたら「コロナ禍の時期に何をやっている!」とネットでは叩かれた。実際その場にいた人々は同氏に好意的だったとの話もあるが、結局東京五輪は「呪われた五輪」と国内外から称されてしまったのである。

「日本のトイレはすばらしいという声」に溜飲を下げる人続出、を予言しておく

 とにかく今、ネット民は税金が関わるわかりやすいものを叩きたがる傾向がある。それこそ税金が給料となる政治家――故安倍晋三氏が3500円のカツカレーを総裁選の前に食べたこと、麻生太郎氏が高級バー通いをしていること、菅義偉氏が食べたパンケーキが2800円といった行動でも「庶民感覚がない」と叩かれるのである。

 2020年、新型コロナ対策分科会会長だった尾身茂氏が理事長を務める医療法人は2019年比311億円の補助金を得ていた。しかも、使われない「幽霊病床」を作っての結果である。これまでのコロナ対策費は300兆円とされていて、結局コロナでは補助金で潤った小規模飲食店と医療機関、不正に補助金を獲得した事業者らは儲かったが、多くの国民に「儲け」はない。これにはもっと怒っていいはずなのだが、そこには怒らず、2億円のトイレや3500円のカツカレーに怒る。つまり、トイレやカツカレーなど、自身の生活で身近なものであれば怒ってもよいと勘違いするのか、テキトーに「高い!」と憤慨するのである。