心情を切り取るシーンがないというか、大人になった結さんという人物にそういった思想がもともと設定されていないんだよな。悲劇だよ、管理栄養士である前に生身の人間であれよ。だから「バインダー妖怪」なんて言われちゃうんだよ。

 第100回、振り返りましょう。100回だってさ、よくがんばって見てるよな。

夢を見たの、おむすびがいっぱいあるわ……

 無事、手術を終えたパパさん(北村有起哉)、全身麻酔の最中に夢を見たんだそうです。糸島の実家で、おむすびを食べた夢。

 こんなの、もう「北村さん、脚本もらったとき苦笑いしただろうな」としか思えないよね。この米田聖人という人がおむすびを食べたシーンなんて、一度もないでしょう。「タイトルへの帰結」といえば聞こえはいいけれど、単なる無意味なこじ付けだもんな。これまで自分たちが描いてきた「米田聖人の人生」を踏まえた、今この瞬間じゃなきゃ言えないセリフというのを考える気がない。100回も見てきた視聴者に対する最低の裏切りですよ。失礼だとは思わんのかね。

 そして、そんな空虚なセリフに大粒の落涙で応える麻生久美子さん、立派なもんです。第80回、チャンミカ(松井玲奈)の店に強盗(?)が入ったとき、「チャンミカは事務処理や経理をやっている」とか言いながらアユ(仲里依紗)がボロボロと涙を流したシーンもありました。あのときもアユとチャンミカの友情を描かず業務上の関係の描写ばかりに終始してきたから、セリフが空っぽになっていて、それでもアユはちゃんと泣いていた。

 願わくば、こうして演者が涙を流しているとき、共感して泣きたいんですよ。これは贅沢な希望なんですかね。なんで麻生久美子や仲里依紗の渾身の演技を「うわ、これで泣いたよ、すげえな」なんて冷めきった気分で眺めなきゃならんのよ。

「結を絶賛したい」固執が生む矛盾

 結さんを絶賛したいのはもうわかるんだけど、大枠で絶賛すればいいのに、細部でも場当たり的に絶賛してくるから矛盾が生じるんです。