新型コロナウィルス感染対策の一環としてテレワークが推奨される中、実際に在宅での仕事や作業が実現してみると、さまざまな弊害があることも明らかになってきました。ネット上では、テレワークならではのハラスメント被害なども報告されています。事例を踏まえてどのような考え方や対策が必要か、またテレワークから派生する新しいビジネスについても目を向けてみましょう。
オンライン会議で「メイクしてないの?」はNG!
Twitter上を中心に「セクハラ」などと批判されているのが、オンライン会議でのプライベートに踏み込むような発言です。
「メイクしていないの?」「部屋、散らかっているね」「部屋着はそういう雰囲気なんだ」「ベッドに置いてあるものは何?」……。発言者にとっては軽い冗談のつもりでも、言われた側との関係性によっては不快感を与えかねません。
よく考えてみると、自室というのは友人であっても相当親しくない限り立ち入らせない空間です。「仕事で仕方なく、相手のプライベートな空間に踏み込んでいる」という特別な状況だからこそ、それ以上踏み込んでしまわないように気を引き締めましょう。
こういったハランスメントは発言者に悪気がないケースも多く、かといって悪気がなければ良いということではありません。相手が不快と受け取れば大きな問題にもつながるでしょう。「冗談だから」「ちょっと気になっただけ」という軽い気持ちでなく、相手がどう受け止めるかを日頃から心得ておきたいものです。
そもそもオンライン会議において、「映像までつなげる必要はあるのか?」「音声だけで十分ではないか?」そんな指摘もあります。
とはいえ、やはり相手の姿が見えないと会話がスムーズに進まないこともあるでしょう。そこで映像をつなげる場合は、バーチャル背景を設定するのがいいかもしれません。無地などのシンプルな画像であれば、周囲に「ふざけている」印象を与えることもないはず。
同居ならではの悩み……
他にもテレワークならではの困ったことは、さまざまに存在します。
ワンストップ・リノベーション事業者であるリノべる株式会社は、2020年4月に在宅勤務での仕事場所や家具に関する調査を実施。同社の発表によると、同居人のいるテレワーカーにとって一番の困りごとは「家族の声や生活音などの音が気になる」(43.8%)。ある程度の生活音は仕方ないとはいえ、特に集中したい作業中は気になってしまいますよね。
また、子どもを抱えるビジネスパーソンにとってもテレワークは苦労が多いものです。
オリジナルブランド「マナラ化粧品」の開発・販売を行う株式会社ランクアップは、コロナ禍で保育園や幼稚園、小学校が休校となり、子どもを見ながら在宅で仕事をせざるを得なくなった働くママ社員20名(自社)にアンケートを実施。その結果、約9割が「子どもを見ながら働くことは困難だ」と回答しました。
そこで同社では、家庭で子育てと仕事を両立する社員向けに、勤務時間を5:00~22:00に拡大したスーパーフレックス制度を導入したそうです。
仕事や会社への積極性が低下するケースも
同居・ひとり暮らしに関係なく、テレワークの短所としてしばしば挙げられるのが“仕事や組織への積極性が低下しがちなケース”です。
求人メディアなどを運営する株式会社アトラエと、総合人材サービスのパーソルプロセス&テクノロジー株式会社は、テレワークとエンゲージメント(組織に対する愛着心や信頼感)の関係について、共同分析(実施期間:2019年10月~2020年3月)した結果を発表しています。
そのレポートによれば、「長期間のテレワークにより人と人とが直接会えない時期が続くことで、人とのつながりが弱まってくる可能性がある」とのこと。また、「テレワークの実施と人事異動が重なると、仕事への熱中度合いが低下することがある」とも分析しています。
このレポートでは、テレワークで「新しい業務について、自分のやるべき仕事やその意義を明確にしていくこと」「新しい環境において、一緒に働くメンバーの人となりを知っていくこと」の2点が困難になるとの結論を導いています。そして、エンゲージメントを維持するためには、オンライン上でコミュニケーションを図る工夫をするように推奨しています。