◆被害だと認識されないように犯行に及ぶ加害者も
子どもに“被害”だと認識されないように犯行に及ぶ加害者もいることも、忘れてはいけないポイントだといいます。
「例えば通学路などで後ろから見つからないようにストーキングし、人目がつかないところで『背中に虫がついているよ』と声をかけられ、『あ、服の中に入っていっちゃった』とシャツの中に手を入れ身体を触られても、被害児童はなんとなく変な感じがしても『虫を取ってもらったんだから』と自分の中で納得し、保護者に報告しないパターンがあります。
こうしたことを考えると、家庭内での包括的性教育や、『自分の体は自分のもの』という性的自己決定権について子どもにわかりやすく教える重要性はとても高いと言えます。例えば身体を他者に触れられる際は、どんな状況下においても、それがたとえ親であっても、本人が『嫌だ』と感じたらそれを断っていいという『性的同意』を子どもと一緒に学ぶ機会を数多く作ることが重要です。
そうした教育を通じて、性について当たり前の話題として話し合える関係性を構築していくことで、未然に防ぐことができる犯罪もあるのです」
<取材・文/すがはらS>
【斉藤章佳】
大船榎本クリニック精神保健福祉部長(精神保健福祉士/社会福祉士)。大卒後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、約20年に渡りアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性犯罪・児童虐待・DV・クレプトマニアなど様々なアディクション問題に携わる。その後、2020年4月から現職。近著に『男尊女卑依存症社会』(亜紀書房)『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)等