一般的に「若いころからの健康管理は大切」と言われます。生活習慣を整えて健康管理を行うことがなぜ大切なのか、具体的な理由まで知っている人は少ないのではないでしょうか。また生活習慣と所得には、深い関係があるとも言われています。ならば健康管理を行えば所得が上がるのでしょうか?そこで今回は、生活習慣が関わる肥満とお金の関係について紹介します。

「太っている」ことと「肥満」は違う?具体的な定義とは?

(画像提供=milatas/stock.adobe.com)

太っていることを気にしてダイエットを始める人も多いことでしょう。しかし見た目が太っていることと、医学的な肥満は必ずしも一致するわけではないということをご存知でしょうか。

肥満度はBMIで判定され男女ともにBMI22.0が標準

健康な体を維持し生活習慣病を予防するためには、肥満にならないことが大切です。多くの場合、肥満度の判定には国際的な標準指標であるBMI(ボディ・マス・インデックス)が用いられており、体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割った指数で表します。

男女ともにBMI22.0が標準です。肥満との関係が深い糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病に統計上最もかかりにくい数値だと言われています。

そもそも「肥満」とは体脂肪が過剰にたまった状態のこと

そもそも「肥満」とは単に体重が多いことではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことを言います。BMIは体重と身長を用いて計算する指標のため、筋肉質な体形と脂肪の多い体形の区別ができません。

市販の体重計のなかには体脂肪が測定できるものがありますが、機種によって判定基準が違います。BMIや市販の体重計による数値は、肥満を測定する目安程度に捉えておくとよいでしょう。

特定健診で見つかるメタボリックシンドロームとは?

肥満には腹腔内に脂肪がたまった「内臓脂肪型肥満」と、皮下組織に脂肪が多くたまった「皮下脂肪型肥満」があります。内臓脂肪型肥満は、下半身よりもウェストまわりが大きくなるのが特徴で、この体型から「リンゴ型肥満」とも呼ばれ男性に多く見られます。

皮下脂肪型肥満は臀部や太ももなどの下半身に脂肪がつくことから「洋ナシ型肥満」とも言われ、女性に多く見られます。そして内臓脂肪型肥満のほうが糖尿病などの生活習慣病を発症するリスクが高いと言われています。

生活習慣病にかかる人が増えたことから、2008年から開始された特定健診・特定保健指導では、生活習慣病のリスクが高い肥満を検査で診断することになりました。この検査では、内臓脂肪型肥満を腹囲で判定し、中性脂肪・血圧・血糖のいずれか2つ以上の項目で異常がある状態を「メタボリックシンドローム」と診断しています。

お金と肥満の関係とは

(画像提供=kornnphoto/stock.adobe.com)

アメリカでは貧困世帯の子どもたちの肥満が社会問題の一つになっています。先進国では経済的理由で飢える人が少なくなっているものの、生鮮食品より安く嗜好性が高いファストフードに食事が偏ってしまうことで肥満が増えているのです。

厚生労働省の「平成30年国民健康・栄養調査結果」によると、肥満の人の割合は男女ともに所得による統計上の違いはあまり見られませんでした。ところが健康の基本となる食事に関しては顕著な違いが見られました。

主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度を所得が異なる世帯で見た場合、以下のようになっています。

【主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度】

年収 ほとんど毎日 ほとんどない
男性 女性 男性 女性
600万円以上 52.5% 57.5% 8.9% 7.7%
400万円以上600万円未満 47.6% 53.7% 12.6% 9.0%
200万円以上400万円未満 43.9% 48.5% 13.5% 8.8%
200万円未満 37.3% 39.6% 20.8% 13.4%

年収が下がるにつれてほとんど主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を摂取している割合は男女ともに下がっています。一方で「ほとんどない」割合は年収が下がるにつれて男女ともに高くなっています。

このことから、男女ともに所得が低い者世帯では栄養バランスの取れた食事をする回数が少なく、日本でもアメリカと似たように所得と食生活には深い関係があることがうかがえます。