ペンネームの由来とは

松本:ちなみにペンネーム「南沢篤花さん」の由来とは?

大熊:父の芸名である北沢と、私の下の名前の篤子を使用しようと思いました。そしたら姓名判断の先生に、北沢は字画が悪いと言われて、篤も男字で字画が悪いと言われました。でもすごくいい字だし両親がいろいろ考えてつけてくれた言葉なので使った方が良いので篤(あつ、とく、あい)の次の言葉を七画の漢字にするよう言われて南沢篤花になりました。

尊敬している翻訳者さんはいますか?

大熊:芹澤恵さんの翻訳が好きです。随分キャリアのある方でミステリーが多いですが、最近はその他の翻訳もされています。

芹澤さんの訳は漢語がよく使われています。私にはそのタッチがないので勉強になりますね。

お亡くなりになったR.D ウィングフィールドさんが書かれた『クリスマスのフロスト』というフロスト警部シリーズがすごく面白いです。

翻訳で調べものをする場合について

松本:大熊さんはノンフィクション系が多いですよね。

大熊:ノンフィクション系だけでなくミステリーもやりたいと思っているのですが、なかなか門戸が狭くて。

得意不得意で言えば調べるのが得意なのでノンフィクション系が得意かもしれません。

書いている作者もいろいろな文献を紐解いて引用しています。そのため邦訳が出ていたらその訳をそのまま引用するのが一応原則です。

これを調べるのが大変で、注釈に原書のタイトルとページが書いてありますが、日本語のページとは全く異なるので突き合わせるのが大変です。

松本:本はご自分で購入されるのですか?

大熊:たいてい図書館で済ませます。当時関西に住んでいて、大阪府立図書館にはかなりの蔵書がありました。リサーチ用の書籍を借りるために、スーツケース2つを持っていって、パンパンにして帰ってきたことがありますよ。

手に入らないものは自腹で買ったり、よほど興味があれば購入したりしますね。

出版翻訳の喜びとは?

松本:今回の訳書『天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす~』の登場人物ですごいな、突出しているな、と思ったのは誰ですか?

大熊:人間としてはどうしようもないアインシュタインとピカソですね。やはり大半が変わり者でとんでもない人でした。でもその発想がすごいなと思います。

ピカソは、だんだん成熟していくと、大人として絵を描いてしまって、逆に子供のような絵を描けるようになるのに長い年月を費やしてしまった、というのがあります。ノンフィクションの面白さですよね。

松本:ちょっと鳥肌が立ちますね。そのような「人が知らないこと」が本に情報としてまとめられて、出版されるから売れると思うのですが、「知らないこと」を訳すって難しくないですか?「今まで日本語になかった知識」が書かれているわけで。

翻訳者はリサーチの天才!?
(画像=『HiCareer』より引用)

大熊:そこが面白いですね。調べていくうちに自分も知識が増えていくし、今まで知らなかった分野のことも知って、またちょっと興味が沸いてきて、図書館で借りてきていたけど、もうちょっとちゃんと買って読みたいな、面白いな、関連書籍も読んでみたいなと、興味を深めていけます。

松本:出版のお仕事があるなしにかかわらず、結構いろんな情報は本を読んで収集されているのですか。

大熊;本は好きですね。母親の介護でここ4~5年忙しくて本を読む時間もありませんでしたが、今はそれを取り返すように読んでいます。

松本:やはり翻訳者さんは本好きじゃないと難しいですね。僕も何人かインタビューしていて、確実に皆さん本が好きですよね。

大熊:活字が好きじゃなかったら、多分、翻訳の仕事はつらいと思います。

今後の目標

松本:今後の目標を教えてください。

大熊:今出版のお話は新しいものが来ていないので、持ち込み企画を考えたいなと思っています。あと私は産業翻訳のお仕事も力を入れたいので、日英翻訳も勉強しようかなと思っています。

ITもおぼろげな知識しかないので、確実な知識が欲しいと思っています。夫はITの専門家です。私はITが分からず、夫は英語があまりできないので、4月から2人で週に何回か勉強の時間を決めています。

松本:産業翻訳では、クライアントによっては、品質にこだわらずに何よりもスピード重視のケースがあります。社内の部署でしか見ない、自分がサラッと読みたいだけとか、色々なパターンがあります。出版翻訳に携わる方は、自分の作り出す訳文の品質にこだわっている方が多いかと思いますので、気持ちの面で難しい部分があるかと思います。大熊さんは、その辺の気持ちの整理はどうされていますか?

大熊:時間的な制約がある場合はあまり気にならないタイプですね。もちろん「品質のよくない訳文」というのは気持ち悪くてしょうがないですけど、クライアントが求めていることなので。

何よりも私は仕事を詰め込むのが好きなんです。割とワーカーホリックでお仕事大好き人間です。仕事が詰まっていたら家事を全部放棄して、おにぎりだけで仕事するみたいなのでもオッケーです。空いた時間があるのが大嫌いな人間です。ぼーっとテレビを見るとか苦手ですね。

翻訳者はリサーチの天才!?
(画像=『HiCareer』より引用)

出版翻訳を目指している方にメッセージを

松本:出版翻訳を目指している方にメッセージはありますか?

大熊:とにかく顔と名前を売らないと話にならないので集まりに顔を出すと良いです。

何か人と違うことをして積極的に営業努力することが絶対に大事だと思います。

松本:ありきたりなハートフルなメッセージより100倍役に立つアドバイスだと思います。

大熊:自分がこれいいなって思う原書を読んでそれこそリーディングやレジュメを作って、編集部に送ってもいいと思います。それを10本やれば多分覚えてもらえます。

松本:また来たぞ、この人ってなりますよね。そこに何か光るものが見つけてもらえば仕事につながっていきますよね。

それでは本日はお時間をいただきありがとうございました。


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