親が高齢になってくると、「今後もし自分が面倒を見ることになったら……。」と考えることも増えるのではないでしょうか。特に子どもが自分だけの場合、何かあったときに面倒を見るのは確実に自分の役目だと思って不安に思う方もいるかもしれません。

「親の世話」と「自分の老後」

50代のTさん(夫)とMさん(妻)はともに一人っ子です。共働きで子どものいないご家庭で、これまで特にお金に関する困りごとはない生活を送っていました。貯金は2,000万円ほどあります。

ただ、遠方に住むTさんの父(82歳)は近年体調を崩しがちで、入退院を繰り返している状態です。「もし、今後介護状態になってしまったら」と思うと不安とのことでした。実は、Mさんの父も2年ほど前に脳梗塞で倒れ、母が介護にあたっている状態です。

一人っ子同士の夫婦の場合、それぞれの両親4人を2人で支えることもあります。ずっと健在でいてくれたらいいのですが、介護が必要な状態になった、しかも複数人が同時期に重なった、などになるとそれまでの生活が一変してしまうかもしれません。

また、Tさん夫妻自身も間もなく老後を迎えます。子どもがいないので、もし自分たちが介護状態になったりお金に困ったり何かあったとしても頼れません。親4人を支えつつ、自分たちの老後の安心も確保するというのは、いくら共働きで収入があっても不安は尽きないでしょう。

一人っ子が安心して老後を迎えるためにしておきたいこと 

親と話をしておく

自分の老後にもし親の介護が重なったら、と考えて不安を感じるのは当然のことです。一人っ子なら特に「自分がなんとかしないと!」という気持ちにもなるかもしれません。

でもまずは、親とじっくり話してみましょう。もしかしたら自分が知らないだけで親には貯金や保険があり、思っているほど困っていないかもしれません。

親と話ができるうちに、「もし介護が必要になったら」「万が一のことがあったら」「独りになったら」など、さまざまなケースを想定して、今後のことをさりげなく聞いておきましょう。

「地元に残りたいのか」「一緒に暮らしたいのか」「施設に入りたいのか」、どれを選ぶのかによって費用もこれから必要な行動も大きく変わってきます。聞きにくいかもしれませんが、経済状況も確認しておきたいところです。

使える社会保障制度を知っておく

介護保険などの公的な制度について、あらかじめ情報を集めておくとよいでしょう。老後に入れる施設の種類や費用などもあわせて調べておくと自分の老後にも役立ちますよ。

行政やNPO、ボランティアなどで話を聞いてもらうこともできますし、自治体の地域包括支援センターでは、介護予防の相談や利用できる社会保障制度の案内などもしてもらえます。

さらに、もし遠方の親の世話が必要になっても、介護のプロに任せたり、民間の「見守りサービス」なども利用できます。仕事と介護が重なっても両立できるよう、介護休業給付などの制度もあります。受けられる支援は徹底的に活用しましょう。

お金の準備

もし親が経済的に困っていて、利用できる社会保障制度も限られている、そんな状態ならTさんたちが貯めてきたお金が役に立つでしょう。生命保険文化センターの調査によると、平均の介護費用は一時的なものが69万円、毎月の費用が月額7万8,000円、平均介護期間は4年7ヵ月です。

Tさん夫妻の場合はまとまった貯金もあるので、もし介護費用がある程度かかって、Tさんが費用を全額負担することにしたとしても当面お金を出し続けることができるでしょう。ただ、それは自分たちの老後のためのお金でもあります。そのため、これまでのように堅実な貯金を続けたいところです。

老後の資金準備にはiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)という方法もあります。60歳までお金を積み立て、運用結果に基づいた金額を受け取るものですが、リスクがほぼないものも選べますし税金の負担が軽くなるメリットがあるので50代でも充分有効です。