【今週の一冊】

「カリグラフィーのすべて 西洋装飾写本の伝統と美」(パトリシア・ラヴェット著、高宮利行監修、グラフィック社、2022年)

かつて留学していた頃、ロンドンの大英博物館でカリグラフィー講座に参加したことがある。文字はアラビア語。先生が私の名前をアラビア語で書いてくださり、それを模写して練習するという講座だった。右から左へと綴られていく自分の名前が、まるで芸術装飾品のように見えたことを覚えている。と同時に、「相手の言語がわからないこと」というのは、これほどにも情報遮断状態になるのだなと思った。

今回ご紹介するのは西洋のカリグラフィーを取り上げた一冊。聖書の一節などを書き写すことで知られる手法だが、実に奥が深い。今のように筆記用具が充実していなかった古代では、葦のペンや鳥の羽を用いたペンが使われていた。時代とともに変化を遂げるのだが、特にカリグラフィーの世界で大きな貢献をしたのはエドワード・ジョンストン。20世紀初頭に書き方を確立させている。ペン先の角度や、保持の仕方など、細かく定めたことが本書からはわかる。日本の書道も同様のお約束事があることを考えると、「書」の世界はある意味共通項が多いのかもしれない。

中でも私のお気に入りはドロシー・マホニ筆の「タウン・ハウスの地図」。比較的新しい1976年の作品だ。これはイギリス・ケント州にあるWrothamの街地図を描いているのだが、のどかな住宅の絵と共に表されている。グーグルマップで現在の地図を調べてみると、このカリグラフィー作品とほぼ同一であることがわかって楽しい。

ちなみに私は書道も筆ペンもニガテ。冠婚葬祭の記帳など、とてつもなく幼稚な文字になってしまう。長年通訳の仕事を続けたからか、書くのも速さだけが取り柄である。本腰を入れてペン習字を習おうか真剣に考えているところだ。


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