残7点のうち5点は、卵化石の分類体系に基づき、北米での胚化石の発見によりトロオドン科獣脚類または、そのごく近縁グループの卵であることがわかっているプリズマトウーリトゥス卵科に分類した。

 しかし、これらの標本はプリズマトウーリトゥス卵科には珍しい網目状の隆起模様が卵殻表面に見られるのが特徴的で、トロオドン科の他の卵殻化石には見られないため、新卵属・新卵種と判定された。そして、「ラモプリズマトウーリトゥス・オオクライ」と命名された。

 殻の厚みから推定される卵は小さく、100g程度と考えられ、ニワトリの卵(約60g)よりもやや大きい程度で、小型のトロオドン科(体重12~17kg程度)が産んだものと考えられる。

 また、残り2点の標本については、卵殻本体は確認できず、分類は不明となった。

 中生代の日本の恐竜卵殻化石は、これまでに岐阜県、石川県、福井県、兵庫県、山口県で見つかっている。これらのうち鳥類を含む獣脚類恐竜の卵殻解析は福井健と兵庫県に続き3例目となる。トロオドン科の可能性のある卵殻の報告は兵庫県に続き2例目で、手取層群からはこれまでトロオドン科の骨化石は見つかっていなかった。

 手取層群大黒谷層は約1億2900万年~1億3300万年前と、現在知られている国内の卵殻化石産地の中で最も古く、荘川地域の標本は日本最古の卵殻化石となる。

 この年代のトロオドン科に近縁な恐竜の化石は卵殻化石を含め、世界的にも発見例に乏しく、アジア圏では中国北東部からの2種のみ。今回の発見は約1億3000万年前の小型獣脚類化石として、アジア最東端の発見となった。

 研究グループでは、「荘川地域の大黒谷層は世界的にも恐竜化石の発見例が乏しい時代のもので、その空白を埋める化石産地として継続的な研究を行っていく予定」としている。

 今回の研究結果は11月24日、Historical Biology誌に掲載された。