この記事は書籍『本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』の内容を抜粋したものになります。
※以下、書籍より抜粋
「人気ランキング」は、 むしろ「買ってはいけない商品」ばかり
「今、一番売れている投資信託の商品ですよ!」
金融機関の窓口では、このようなセールストークがよくおこなわれているようです。
しかし、このようなセールストークにのせられるようにして商品の購入を決めてしまうのは、絶対にやめましょう。なぜなら、「売れている投資信託」だからといって、「優れている投資信託」であるとは限らないからです。じつは、「投資信託の人気ランキング(売上ランキング)」には、問題のある商品が含まれていることが多いのです。
中でも、もっとも問題のある商品の代表が「毎月分配型(まいつきぶんぱいがた)」です。
2016年によく売れた投資信託のひとつに、海外の不動産に投資をする『REIT(リート)』があります。この商品は、長期的に見ると、多くのリスクをはらんでいます。
それでもなぜ人気が高かったのかといえば、毎月、「高水準の分配金」が支払われるからということに尽きます。
分配金(収益分配金)とは、決算後に購入者に支払われるお金のことで、投資信託の資金(分配可能原資)から捻出されます。投資信託には、「分配金を出す商品」と「分配金を出さない商品」があります。分配金を出す場合も、年1回や毎月など、その頻度に違いがあります。日本では「毎月分配型」の商品が人気を集めていて、何年にもわたって人気ランキングの上位にランクインしているのです。
分配金は、基本的に運用を通じて得られた利益から支払われます。ところが、高い分配金を出している商品の中には、投資家の資金自体を分配金にしているものがあるのです。そのような商品の分配金を受け取っても、それは自分が投資したお金が戻っているにすぎません。
なぜ商品を運用する会社がそんなことをするのかといえば、分配金が高ければ高いほど、投資信託が売れるという事実があるので、他の毎月分配型の商品よりも少しでも高い分配金を出そうとするからです。
長期投資を前提にすると、運用で得られた利益は新たな運用に回すのが望ましいといえます。そのほうが運用する資金が増えるので、将来的に得られる利益も大きくなっていきます。
また、利益から出される分配金には税金がかかるので、税金の徴収が前倒しになってしまう点も、毎月分配型のデメリットです。さらに、分配金の送金にかかる経費や、分配金の支払いのたびにおこなわれる運用会社の決算の費用もバカになりません(こうした経費は、当然、購入する側の手数料などに上乗せされています)。
このように、人気ランキングは、問題の多い毎月分配型の商品ばかりがランクインされているので、あまり参考にしてはいけないのです。
ただし、こうした批判は、じつは私が本書で初めておこなっているわけでもなく、以前から存在しています。これまでに新聞やマネー誌、ネット上の記事などで、多くの専門家によって毎月分配型商品の批判がされてきましたが、それをまったく無視するかのように、毎月分配型は売れ続けているのです。
人気ランキングは、金融機関の“販売力”が反映される傾向にあるので、金融機関の販売窓口でいまだに毎月分配型の商品が積極的に勧められているということも影響していると思われます。
他にも、商品の購入者側である個人投資家の方々の中に、毎月分配型への根強いニーズが存在しているという事実があります。
毎月分配型の商品の問題点を理解した上で保有している方も多数おり、そういう方がなぜ毎月分配型で資産運用をするのかといえば、分配金を毎月の生活費の補てんにあてているからです。
2016年には、100万円を投資すると、毎月の分配金が2万円程度も支払われる商品がありました(年間の利回りに直すと 24 %というとんでもない利回りです!)。十分、生活費の補てんになる金額といえるでしょう。毎月分配型の人気の背景には、こうした個人投資家の切実なニーズもあるのです。
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)
*『本当にお金が増える投資信託』シリーズ
問題が多い「毎月分配型」投資信託が売れ続ける理由
1年でもマイナスになると悪化する「複利効果」そのカラクリは?
素人でもできる「優れた投資信託」の見つけかた
長期投資は「リスクが小さい」と言う「誤解」
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篠田尚子(しのだ・しょうこ)
楽天証券研究所ファンドアナリスト。慶應義塾大学法学部卒。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。2006年ロイター・ジャパン(現トムソン・ロイター・マーケッツ)入社。2013年にロイターを退職し、楽天証券経済研究所に入所。現在は日本の投資信託市場動向を国内外のメディア等へ配信しながら、海外の投資信託市場の分析も手がけている。
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