合同会社terasuの秋山楓果さん
合同会社terasuの秋山楓果さん
 開発チームの秋山さんは、「坂野さんの“AED愛”は、私も理解不能です(笑)」と言いながらも、「坂野さんの熱い思いがあったからこそ、“小さい子ども向け”という部分に妥協しない、おもちゃとしての『トイこころ』が生まれたと思う」と言います。

◆「目撃された心停止」の中でAEDが使われたのは5%

小中学生向けに製作したペーパークラフトのAED
小中学生向けに製作したペーパークラフトのAED
 坂野さんはこれまでのキャリアの中で、AEDの認知度の低さを痛感したといいます。

「医療業界にいたときは現場のドクターやナースから、『AEDを使ってもらっていたら、助かる命があったのに』というお話しを何度も聞きました。もっと皆さんにAEDを知ってほしいという想いから、AEDの認知向上のための発信や活動を始めました」

 救急搬送された心原性心停止(心臓に原因がある心停止)の人は、全国で年間約9.1万人います。 その中の2.9万人は倒れる瞬間を他の誰かに目撃されていますが、AEDが使われたのはたったの5%だといいます。坂野さんはその要因について、「知識がないと行動する勇気を持つことは難しいのでは」と考えています。

「救急車が到着するまで平均10分はかかるので、その間何もしないでいると命が失われてしまうことがあります。でも、“AEDを使うのが何となく怖い”と躊躇してしまう気持ちも分かります。AEDを知ってもらうことで、そういう恐怖心が薄まっていけばいいなと思います。

実際に、心原性心停止の方に居合わせた人が心肺蘇生と AEDショックを行った例では、約半数が救命されています。しかし、AEDショックを行わず119 番通報のみの場合の救命率は6. 6%。AEDショックを行わず、119 番通報と心肺蘇生を行った場合の救命率は9. 9%と大きな違いがあるのです」

 坂野さんは、小中学生向けにペーパークラフトのAEDを提供するなど、AEDに興味を持ってもらうきっかけを模索してきました。その中で、「小さい子どもたちに知ってもらうにはどうしたらいいのか」と考えるようになりました。