茜さんのデート中の様子
茜さんのカフェデート中の様子(写真は本人提供)
 一緒にカフェに行ったり食事をしたりして、楽しい時間を過ごしていたふたり。しかし、ASDの方に多い特性の一つであるこだわりの強さから、徐々に意思疎通が難しいと思う場面も増えてきます。

「次はこのカフェに行こう」と約束していたのに、大輔さんは会ったら約束とは違う行動を取ろうとします。彼は一度何かやりたいと思い始めると、茜さんが「はじめの予定と違うよ」と伝えてもそれを受け入れることが難しいのです。

◆母親の影響で、言いたいことが言えなくなっていた

「親から『なんでこういうことをするの』『これはやめなさい』とずっと怒鳴られて育った私は、彼に対して『なぜ?』と思うことがあっても、言い出しにくかったです。

 彼を責めているわけじゃなく、話し合いたくて単純な疑問で『どうして○○なの?』と言いたいだけなのに、それも言えませんでした」(茜さん、以下「」内同)

 大輔さんは当時、就労移行支援(障がいのある人を対象とした職業訓練のサービス)を受けて自分の適職を探しているタイミングでした。大輔さんはそこでパソコン操作を習った際、茜さんへ「清掃とかやっているんでしょ。パソコンも使えるようになった方がいいんじゃないの」と、「上からアドバイスをしてきた」そうです。

 茜さんは大学でもパソコンを使っており、パソコンを使う仕事をしていたこともあります。それを伝えると大輔さんは「芸術大学を出てるならスキルを活かしなよ」とまた別のアドバイスをしてきます。

◆別れのきっかけになった「まさかのひと言」

 芸術大学出身の茜さんは、職場内に貼るチラシ作成など、簡単なデザインはおこなっていました。それを見せたところ予想より出来が良かったのか、彼は勝手に対抗心を燃やし「別の就労移行(支援)でデザインを学ぶ」と言い出します。

デザイン
写真はイメージです(以下同じ)
「私はデザイナーとして仕事ができる人のレベル感は分かります。子どもの時から絵が得意でなおかつ好きな人たちがゴロゴロいる業界です。30代になってから1~2年学んだ程度の人が乗り込んでも、仕事にならないのではと伝えたんですけどね」