NHK朝の連続テレビ小説『おむすび』、20日放送の第99回では主人公である管理栄養士・米田結(橋本環奈)の父親がステージ2の胃ガンであることがわかり、手術が成功しました。

 いうまでもありませんがNHK朝の連続テレビ小説は15分であり、そのたった15分の間に主人公の父親がステージ2の胃ガンであることがわかり、手術が成功したのでした。

 ストロークがないのです。ドラマ的にいえば、父と娘の関係を描く絶好の機会であるはずです。胃ガンについて詳しくないから不安を抱く父と、医療関係者でステージ2の胃ガン患者を担当したこともあるであろう管理栄養士の娘の間に、どんな会話でも作れる“おいしい”シチュエーションなんだけど、こんなあっさりいくんか。

 なんというか「つまんね」とか「やる気あんのか」とかもちろん思うんだけど、虚しさを感じましたねえ。結さんという人物がホントに空っぽで何もなくて、作り手側もこの人の中身を作ってあげようとか、輝かせてあげようという気持ちがゼロであることがハッキリした回だったように思います。

 ああ、しんどいな。しんどいし、この感じを言語化するのはムズいな。振り返りましょう。

「頼りになる」だけを描いて何を感じろというのか

 ドクター森下(馬場徹)が米田親子にガンを告知するシーン。結さんは、にわかにショックを受ける愛子(麻生久美子)に視線を送ると、医師の説明をフォローする役割に徹することになります。

「全然早期やけん、大丈夫」

「外科の先生もすごく頼りになる方やけん、安心して」

 まるで親子の中で、結さんだけは先に検査結果を知っていたかのような言い方です。なんだ、この温度感のない告知シーンは。

 親がガンであることを告知されて、たぶんここで描かれた結さんの心の動きというのは「そういう可能性もあると思っていたけど、やっぱりそうか。ママはそりゃショックを受けるよね、私だって不安だけど、ここは私がしっかりしなきゃ」というものだと思うんだけど、その脚本の意図を演出しようという熱が感じられないんだよな。