兄は、10数年前に家を出たまま所在が分かりません。父親の相続について、除外して「遺産協議」できますか?
時代とともに、親戚間の付き合いが希薄になりつつあるという話はよく耳にします。それだけでなく、家族内の関係性についても、父親が絶対的な発言力をもつといった時代とは異なり、それぞれの事情が存在するようです。   今回は、父親の相続手続きにおいて、相続人が子である兄と弟の2人であった場合の事例を紹介します。相続人である兄は、10数年前に、ある日突然家を出たまま行方がしれません。「所在が分からない兄については、除外して『遺産協議』できますか? 」という弟からの質問に対する回答とともに対処法を考えてみます。

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所在不明の相続人を除外して、遺産分割協議はできる?

結論からいうと、所在が分からない兄を除外して「遺産協議」できるか、という質問に対しては、「できません」という回答になります。
 
遺産分割協議は、法定相続人全員の合意が必要です。そのため、所在不明の相続人を除外して協議を行った場合、その協議は無効となります。後になって、その相続人が現れた場合には、トラブルになる可能性とともに協議のやり直しを行う必要があります。
 

所在不明の相続人がいる場合の対処法

所在不明の相続人がいる場合の対処法を3つ紹介します。
 

まずは、所在確認を行う

まずは、相続人(事例の場合、10数年前に出ていった兄)の居場所を確認する努力が必要です。
 
■戸籍の附票を取得する
戸籍の附票には、住民票上の最新の住所が記載されています。役所で請求できるため、まずは戸籍の附票を確認しましょう。
 
戸籍制度は、戸籍法に基づいて、出生から死亡に至るまでの親族的身分関係を戸籍簿に登録し、公証する制度です。戸籍の附票とは、戸籍が作られてから現在に至るまでの住所の履歴を記載した証明です。
 
■住民票の閲覧申請
戸籍の附票で確認した最後の住所地で住民票の閲覧を申請し、転居先などの手掛かりを得ます。
 
ただし、閲覧できるのは、本人または同一世帯の家族(住民票上で同じ世帯に登録されている場合)に限られるため、弟が単独で住民票の閲覧や取得はできません。弁護士や司法書士などの専門家に依頼すると「職務上請求」により住民票を取得することが可能です。
 
■弁護士や探偵を利用する
費用は発生しますが、弁護士などの士業のほか、探偵などを利用し、所在の調査を依頼する方法もあります。
 

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