すべてを悟った風のキャラクターである王子だったら「何かに一生懸命取り組んでいる子」とか「人に気を使える子」とか、内面的なことを言いそうなもんですが、『おむすび』というドラマは結さんの内面、結さんの魅力をひとつも描いてこなかったから外見と印象論でしか結さんという女の子を評価できないんだなと感じたんです。

 それから85回も話数を重ねて、まだ『おむすび』は「凛々しい」とか「がんばって働いてる姿に感動した」とか、見た目と印象論でしか評価できない。つくづく内面を描いてこなかったドラマだと思うわけです。

 このドラマって、めちゃくちゃ「結さんアゲ」「結さんこそ救世主」という展開を作っておきながら、まったく米田結という人物に愛情を注いでこなかったんだな、ということが、すごく明らかになった回だったと思うんです。ちょっとうまく言語化できてる気がしないんですが、今日の結さんはすごく空っぽだった。

アユ、しっかりしなさい

 あとは言語化しやすい話。

 なんでアユ(仲里依紗)が急に仕事のできない人になっているのか。

 ナベべ(緒形直人)とチャンミカ(松井玲奈)にオリジナルブランドのサンプル品のクオリティの低さを指摘され「ファーストサンプルよりはマシになった」と言ったり、「海外やからメールでやり取りするしかなくて」「画像で何度も修正して」とか、KING OF GALらしからぬ顔で言い訳を繰り返してる。

 ナベべが言うように現地に行って誰が作ってるか確認してくる必要まではないと思うけど、10年以上アパレルで働いてきて、急に商品のクオリティについての判断が甘くなる意味がわかんないんですよ。

 ギャル服で日本中を元気にすると言って会社を立ち上げた人が、その走る方向を見誤ってなんらかの壁にぶつかるならわかるんだけど、本業の能力のクオリティを急に下げるのは、すごく悪手だと思う。

 アユを壁にぶつけたいという意図があったとき、アパレルの仕事のその先の壁というのを設定できないんですよね。作り手側が壁を発見できなかった、あるいは発見しようとしなかった、ということです。