もう少し震災の話をします。NHK朝の連続テレビ小説『おむすび』が、東日本大震災をどう描いたかという話の総括です。
主人公の結さん(橋本環奈)の周辺で実際に被災地に赴いたと思われるのは3名。東京の病院から栄養支援のチームに参加した栄養士・カスミン(平祐奈)と、結の親友であるなっちゃん、それに同行したおじさんです。
なっちゃんとおじさんは東北に向かうと言っていましたが、新幹線に乗れたかどうかすら不明なので、ここでは除外するしかありません。おのずと『おむすび』は気仙沼の避難所に入ったカスミンを通して震災と向き合うことになりました。
もちろんドラマですから、すべてを描くことはできません。取材を通して得た数々の情報や実際に起こった事実から取捨選択して、「伝えるべきメッセージ」に即したエピソードを創作することになる。作り手側もマスコミに対してそう応えています。
そして、その「伝えるべきメッセージ」を伝えるために、糸島を襲った福岡県西方沖地震をあえて描かなかった。東日本大震災でも原発事故と放射能汚染、それに自衛隊と消防については一切描いていない。その是非は一旦横に置くとして、今回のカスミンのエピソードだけが『おむすび』のメッセージを伝えるために選ばれ、あえて描かれたものであることは間違いないわけです。
それをどう伝えたんだっけ
ざっくり振り返ります。
震災から3週間後にカスミンが入った避難所では、おむすびとカップラーメンしか食料がなかった。それを知ったカスミンは「私は炊き出しの経験がある」「すなわち炊き出しをせよ」と号令をかける。すると精米と缶詰がどこかから現れ、カスミンはそれを使ってホカホカワカメおむすびとサバツナけんちん汁を作る。なぜけんちん汁にしたかと言えば、1人のおじいちゃんが東北人なので缶詰に拒否感があったからだ。
しかしおじいちゃんは入れ歯が流されて固いものが食えない。そこでカスミンはおじやを作る。おじいちゃんは喜ぶ。栄養士の仕事って素敵だね。