おおむね、そんな感じです。
ここで描かれた避難所ではカスミンの号令で炊き出しが始まっています。カスミンがいなかったら、ずっとカップ麺だったかもしれない。たくさんの人を貧相な食事から救ったのはカスミンである。カスミンこそが被災地にイノベーションを起こしたのだ。そういう話になっています。
この場合、避難所にいた100人中100人の避難者がカスミンのおかげで「めちゃ不幸」から「けっこうハッピー」になっている。「カスミンお手柄、超えらい」「ほかの人は、がんばってるけど成果はそうでもない」。リーダーの医師(稲葉って役名らしいね、どういう意味?)を不必要に敵対させてまで、そう描いている。
例えばの話をしよう
例えば、です。
この避難所ではすでに有志による炊き出しが機能していたとしましょう。精米も缶詰も必要十分量が届けられており、毎日、炊き立てのごはんと缶詰と味噌汁が供されている。そういう状況にカスミンを放り込んでみた場合の話を考えます。登場人物の素性はそのままです。
カスミンは避難所の隅で、元気のないおじいちゃんを見かけます。聞けば、缶詰があんまり好きじゃないのだという。こんなときだし、みんな喜んでいるから、自分だけ「缶詰嫌い」とか言い出せない。でも食は進まないし、元気も出ない。
そういうおじいちゃんのために、カスミンは炊き出し部隊のところに行って(あらかじめ少し仲良くなっておいてもいいよね)、サバツナけんちん汁への切り替えを提案します。缶詰よりあったかいし食べやすいから、いま冷たい缶詰で満足している方々にも、さらに「食」の喜びを感じてもらえるかもしれない。
炊き出し部隊の人は「ちょうど味噌も不足しかけてきたところだ」みたいな理由もあって、缶詰を入れてサバツナけんちん汁を作ってみる。そしたら、予想以上に評判がいい。缶詰嫌いのおじいさんも美味しそうに汁をすすっている。
でも、どうやらおじいさんはごはんのほうも残しているようだ。入れ歯がないのか。じゃあ、おじやを作りましょう。カスミンが「ごめんなさい、ここのコンロひとつ借りていい?」とか言いながら、1人分だけチャチャッと作る。うまい。久々にちゃんと米食った。そんな話だったとする。