「人の命は、2万分の1でも8万分の1でもない。そうじゃなくて、そこには『1人が死んだ事件が2万件あった』ってことなんだよ。」

 このたけしの言葉と、真逆の思想だと考えればわかりやすいでしょう。被災者は何人だろうが丸っと丸めて「全員かわいそう」であり、その「かわいそうな全員」を救うことにこそ価値があると言っている。

 実際に被災地では、たけしの言う「1人が死んだ事件が2万件あった」その一方で、「1人が救われた行動」が何十万件もあったに違いない。でも『おむすび』は、単にその一例であることでは満足できない。1人救ったくらいじゃ気が済まない。ドラマなんだから、ざっくりまとめて全員救ってやるという、実に傲慢な態度です。チマチマやってらんねえんです。

 約47万に上った東日本大震災の避難者という存在を「ひとつのかわいそうなかたまり」としてしか認識できていない。個人に寄り添っていないということです。

 それが震災の描写におけるこのドラマの本性であって、「丁寧に描く」であり「伝えたいメッセージ」だった。そういうことです。

 その証拠に、結さんは言うんだよ。

「管理栄養士になってたくさんの人を救いたい」

 徹頭徹尾「たくさん」に価値を置いている。「たくさんが素晴らしい」という呪縛から逃れられない。もう言いたかないけど、こいつたった1人の恋人さえ見捨てたくせに。

 そんな感じで、このひと区切りを迎えたタイミングでやっぱり『おむすび』というドラマの震災への向き合い方については総括しておきたかったので、今日はここまでにしておきます。

 ウソです。ちょっとこの月曜の朝は事情があってリアルタイムで書けないんで、日曜の深夜に書きました。第76回については明日まとめてやります。ごめんぬ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)