『HiGH & LOW THE WORST X』(2022年)では、悪の総帥を演じていた三山凌輝だったが、2024年に大きな話題を集めた朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)で演じた好青年役がはまり役になった。

内田英治監督作『誰よりもつよく抱きしめて』の三山凌輝の演技は、一見する価値がある。男性俳優の演技を独自視点で分析するコラムニスト・加賀谷健が解説する。
◆「お姉ちゃん」呼びが新鮮だった朝ドラ『虎に翼』
SKY-HI総合プロデュースで、日本のダンス&ボーカルシーンを牽引するBE:FIRSTのメンバーである三山凌輝が、俳優としてどんどん芽吹いている。三山の才能が大きく開眼したのは、伊藤沙莉主演の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合、2024年)である。
伊藤演じる主人公・佐田寅子の弟・猪爪直明を演じた。岡山の学校で寄宿舎生活をしていた直明が終戦前、猪爪家に帰ってくる第9週第41回で、三山が初登場する。好青年に成長した直明の再登場は、作品全体にさわやかな風を吹き込んだ。
寅子のことを周囲は「寅ちゃん」と呼んでいたのに対して、直明は「お姉ちゃん」と呼ぶ。この呼び方がとにかく新鮮だった。何の屈託もない眼差しと表情で「お姉ちゃん」と呼ぶごとに、視聴者は毎朝、心ときめいたものである。
◆役にさっと差し出す柔軟な演技
