◆野菜配りオバサンになる
1年を通して義母から野菜が送られて来るたびに、ご近所さんやママ友に連絡して野菜を配り歩くようになってしまった後藤さん。ふだん滅多に食べられない、甘くておいしい野菜を食べられるのはとても嬉しく思いつつ、ご近所へのおすそ分けが大変だったとか。
「おすそ分けとはいえ、新しいうちに渡さないと申し訳ないと思い、何か来るたびに、慌ててご近所に連絡して、袋に小分けして、配り歩きました。じゃがいもは大量なので、思いつくかぎりのママ友に連絡して、袋に小分けして、渡しに行きました。あの頃のわたしは“野菜配りオバサン”になってまいました(笑)」
◆義母が亡くなって気づいた優しさ
そんな“野菜配りオバサン”と化した後藤さんに転機が訪れます。数年後、義母が病気で亡くなってしまったのです。それ以来、たくさんの野菜が送られてくることはなくなりました。
「義母が亡くなってから、北海道の旬の野菜をお取り寄せしてみましたが、義母に送ってもらっていた野菜は特別に美味しかったんだな、と分かりました。買って送ってくれたものも特上品でしたし、大事に畑で育てた野菜もとても美味しかったんですよね。気前のよい人で、野菜をたくさん送ってくれていた時期は配り歩くのがちょっと大変でしたが、野菜が送られてこなくなった今は、本当に義母は親切にしてくれていたんだな、と、今さらながらしみじみ感謝します」
秋にスーパーで北海道のじゃがいもが箱で売られているのを見ると、義母のことを思い出すという後藤さん。
「わたしも息子が結婚したら、義母を思い出して野菜を送ったりしちゃいそうです。でも、送る量には気を付けようと思います(笑)」
<文/塩辛いか乃>
【塩辛いか乃】
世の中の当たり前を疑うアラフィフ主婦ライター。同志社大学文学部英文学科卒。中3繊細マイペース息子と20歳年上の旦那と3人暮らし。乳がんサバイバー(乳房全摘手術・抗がん剤)。趣味はフラメンコ。ラクするための情熱は誰にも負けない効率モンスター。晩酌のお供はイオンのバーリアル。不眠症。note/Twitter:@yukaikayukako