◆若い人はがんの進行が早いって本当?
――AYA世代のがんについて、一般的に「若い人のがんは進行が早い」というイメージがあるのですが本当なのでしょうか?
清水千佳子先生(以下、清水):若いからといって、必ずしもがんの進行が早い、予後が悪いということはありません。実際には、がんの種類や見つかったときの進行度合、治療への反応性など、個人の状況によって異なります。全体としては、がんの治療成績が良くなってきており、がんを発症しても長く生きられる方が増えています。
「若い人のがんは進行が早い」という漠然としたイメージから、周りの人から「若いのに可哀想に」と過剰に気の毒がられたり、腫れもののように扱われたりすることで、AYA世代の患者さんは傷ついています。
――若い患者さんは、症状や治療以外にも精神的な辛さも大きいのでしょうか?
清水:実際、がんやその治療の影響で、思い描いていた将来像を変更せざるを得なくなることも多いです。今までの自分と変わってしまうような気持ち、周囲に置いていかれるような気持ちから、アイデンティティーの危機に陥り、適応障害やうつを併発するケースもあります。
しかし一方で、がんの患者仲間や医療者、家族や友人など支援してくれる人との出会いを通して、新たな発見があったり、生き方を見つめ直す機会となったと、がんを「ギフト」と肯定的に振り返ることができるようになる人も少なくありません。
もちろんがんにならないに越したことはないですが、多くの人ががんについての正しい知識を持ち、がんの経験をひとつの個性として考えられるような社会となれば、患者さんの精神的な辛さを少しでも軽減できるのではないでしょうか。