「シーズン・イン・ザ・サン」が重要である理由

 TUBEは1985年、歌謡曲~アニメソング方面で豊富な実績を持つヒットメイカー・鈴木キサブローを作曲に起用したシングル「ベストセラー・サマー」でデビューを飾る。当時の彼らはテレビ出演時にメンバー全員が青と白のストライプの衣装で出演することもあり、チェッカーズなどの先行事例に通じる「アイドル的な見せ方」を意識的に取り入れたプロデュースを受けていた。

 このデビューシングルおよび2ndシングル「センチメンタルに首ったけ」は、高いテンションで駆け抜けるファンキーな歌謡ポップスのテイストが色濃い。これ自体は本稿の趣旨とはややズレるものだが、こうしたテイストは「あー夏休み」以降のTUBE作品における柱の一つとなる「ラテン歌謡」にも通ずるところがあり、彼らの重要なルーツの一つと言えよう。

 そして、彼らの大きな転機となったのが、高い知名度を誇る3rdシングル「シーズン・イン・ザ・サン」(’86)である。

 作編曲を担当したのは織田哲郎。90年代前半、TUBEを含め多数の関連ミュージシャンがヒットを飛ばし一大旋風を巻き起こす「ビーイング・ブーム」で中心的なソングライターとして活躍することになるが、その彼にとっても初のヒットナンバーとなった。先のシングル群に比べてテンションを抑えた122bpm前後のミドルテンポの中で、クリアなギターカッティング、控えめにR&B的な跳ね・グルーヴを演出するパーカッション、清涼感のあるコーラスワーク、ボーカルの間を縫って彩りを添えるシンセサイザーのオブリガートといった要素が絡み合う。こうした音楽性の多くは、前述した90年代以降のサウンドにそのまま通ずるものである。