というのも、私はTUBEのサウンド──特に90年代のシンセサイザーの使い方に、アンビエントや、「バレアリック」と呼ばれる美しく爽やかなクラブミュージックの領域にも通じる、強い美意識を長らく感じてきたためである。例えば、以下の「夏を待ちきれなくて」(‘93)「夏を抱きしめて」(‘94)のイントロの響きや、サビ頭の鮮烈なステレオ感の広がりにぜひ耳を傾けてみてほしい。
彼らのこうしたサウンドの背景には、鍵盤楽器および「サウンドアドバイザー」を務めた小野塚晃の功績がある。彼がサウンドアドバイザーとしてクレジットされているアルバム、具体的には『N・A・T・S・U』(‘90) から『Melodies & Memories』(‘94) までの時期の作品は、それ以前と比べ、シンセサイザーの音色がより透明感を持つ洗練されたものに統一されており、サラウンドの空間的な広がりが意識された、より立体的なサウンドへと大幅な進化を遂げている。
シンセサイザーやエンジニアリング面での貢献が生み出す強い清涼感と、ソウルフルな前田のボーカルを軸に展開される熱くハードなバンドサウンド。ある意味で正反対の要素が唯一無二のシナジーを発揮したことで、小野塚がサウンドアドバイザーとしてクレジットされていた時期のTUBEは、セールス面で右肩上がりの上昇を遂げていく。当時の彼らはデビュー10年目を目前にした、中堅からベテランに差し掛かるような段階といえたが、そのタイミングでセールス上の最盛期を迎え、その人気を現在までに通じる盤石なものにしていったのだ。
彼らはどのような音楽的変遷を経て上述のような90年代のサウンドに辿り着いたのか。本稿はその背景を明確にし、サウンド面からのTUBEの再評価を促す試みだ。
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