この時期から90年代後半にかけ、TUBEはロックバンドとしてのハードな側面を徐々に強めていくことになるのだが、ここで注目したいのが大部分の作曲を担っていくギタリスト、春畑道哉の存在である。

 その功績を振り返る前に、まず1991~1994年のTUBEのシングルリリースの傾向を整理したい。冒頭で述べた、小野塚によるサウンド面の発展とともにセールスの更なる上昇を見せていたこの時期は、基本的に以下(1)(2)の2パターンでのシングルリリースを繰り返していたことがファンの間では広く知られている。

(1) 4月末~5月にリリース。。表題曲は「シーズン・イン・ザ・サン」や「SUMMER DREAM」のテイストを引き継ぐ、爽やかさ・爽快感を強調した楽曲で、通称「迎夏シングル」。5月末~6月にリリースされるアルバムの先行シングル(アルバムに収録されるシングル)という位置づけ。「夏を待ちきれなくて」「夏を抱きしめて」など。

(2)必ず7月1日にリリース。表題曲は「あー夏休み」に通じるラテン歌謡系のテイストを持った楽曲で、通称「盛夏シングル」。これらは全て、オリジナルアルバムには収録されない。「さよならイエスタデイ」「だって夏じゃない」など。

 この全てで春畑道哉は単独で作曲を務めているのだが、このパターンのリリースを重ねていくごとに、彼のギタープレイは(1)では音色・プレイともよりハードに、(2)ではリズムを強調したよりファンキーなものになっていくのが興味深い。それと連動するように、(1)の迎夏シングルはアメリカのバンド、ジャーニーなどに通じるメロディアスなハードロックの色合いを強めていき、(2)の盛夏シングルは(奇しくもジャーニーの源流のひとつでもある)サンタナなどのようなパーカッシブなラテンロックへと発展していく。