ビート&アンビエント・プロデューサー/プレイリスターのTOMCさんが音楽家ならではの観点から、アーティストの知られざる魅力を読み解き、名作を深堀りしていく本連載〈ALT View〉。今回は、夏の定番となるヒットを数々生んだTUBEについて、その国民的なイメージの背景にある80~90年代の音楽的な探求について解説していただきます。
TUBEのサウンドが持つアンビエント~バレアリック的な側面
2017年の秋、Twitter(現・X)上の一部の音楽好きの間で「TUBEとブライアン・イーノ」に関するミーム(おもしろ動画)が流行した。
これは、TUBEが代表曲「あー夏休み」(‘90)を熱唱するテレビ出演映像を使ったもので、音声だけが、アンビエント音楽家であるブライアン・イーノの「Music for Airports 1/2」(‘78)という楽曲に差し替えられている。抑制されたピアノとコーラスが織りなす静謐な音空間と、それとは対照的なTUBEのボーカリスト・前田亘輝の熱くハイテンションなステージアクションのギャップが面白みを誘うという趣向で、ある意味で両アーティストへの敬意を欠く低俗なコンテンツにも思える。一方で実は、私はそこに音楽的なギャップをあまり感じなかった。
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