厚生年金保険料を支払う時と免除される時
厚生年金保険料は基本的に月単位で計算される。会社など事業所に月の途中から入社した際は、入社日に被保険者の資格を取得し、その月の分から保険料を支払うことになる。一方で会社を月の途中で退職した際は、資格喪失日が属す月の前月分までを納めることになる。
注意が必要なのは、資格喪失日とは退職した日の翌日だということである。つまり月の末日に退職した場合、翌月の1日が資格喪失日になる。そうなると末日でない日に退職した場合より、1カ月分多く保険料を払うことになってしまう。
もし入社した月に退職した時、資格を取得した月と資格を喪失した月が同じ時は、その1月分の保険料を納付する必要が出てくる。ただ、さらに同じ月に国民年金の資格を得たり、転職した別会社にて厚生年金保険に加入した時などは、先に資格を喪失した厚生年金保険料の分を納付する必要はない。
厚生年金保険料は、産前産後休業や育児休業の期間中はその支払いが免除される。産前産後休業期間とは一般的に産前42日、産後56日のうち、妊娠もしくは出産のために労務に従事しなかった期間とされる。育児休業期間は満3歳未満の子どもを養育するための育児休業及び育児休業に準じる期間だ。
どちらにおいても休業している間に免除の申出をする必要がある。被保険者がした申出は事業主によって日本年金機構に提出され、問題なければその休業期間中は事業主と被保険者ともに保険料の支払いが免除される。免除期間中も被保険者資格に変更はない。
休業後の厚生年金保険料
産前産後休業や育児休業からの復帰後は、以前ののように保険料を支払うことになる。しかし休業以前と同様には働けない状況で、休業以前の給与額をもとに保険料が決まっていたとすると、大きな負担になりかねない。その点を踏まえ、休業後は通常の随時改定の要件を満たさなくても、標準報酬月額が改定できるような措置が設けられている。
休業終了日の翌日が属す月から3カ月の間に受け取った報酬の平均額をもとにして、4カ月目からの標準報酬月額を決定し直せるという措置だ。そのための要件は2つある。
1つはそれまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額を比較した時、1等級以上の差が生じることだ。2つめは休業終了後の翌日が属す月から3カ月のうち、少なくとも1カ月は支払基礎日数が17日以上の月があることである。特定適用事業所勤務の短時間労働者は11日以上となる。
要件を満たしているなら被保険者が申出書を事業主に提出し、さらに事業主が日本年金機構へ届出をすることで改定が決まる。1月から6月に改定された標準報酬月額は、再度随時改定などがなければその年の8月までの各月に適用される。7月から12月の間に改定された際は、翌年8月までの各月に適用される。
産前産後休業と育児休業どちらの場合も要件、手続きは基本的に同様である。
給与額の減少とともに標準報酬月額、保険料が下がった場合に、将来受け取る年金額まで下がらないよう配慮した特例措置もある。これは養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置と呼ばれる仕組みで、子どもの養育期間における給料の低下を将来の年金額に影響させないために設けられた。
勤務時間の短縮などにより標準報酬月額、保険料が下がっても、子どもの養育開始月から概ね3歳になるまでの期間は、年金額計算にあたりそれ以前の標準報酬月額が用いられる。基本的に厚生年金保険の被保険者か元被保険者がこの特例の申出書を、事業主を介して日本年金機構に届け出ることで措置を受けられる。
育児休業終了後の保険料の計算例
育児休業期間が終了し、職場に復帰した人の標準報酬月額が改定される場合の例を挙げる。育児休業が5月までで終わり、6月より職場復帰となった人が短時間の勤務を希望して、その結果給与が下がることになったとする。6月の給与は24万円、7月は24万5,000円、8月は25万円で、復帰月の6月を含む8月までの3カ月間の平均給与額は24万5,000円であった。それまでの標準報酬月額は34万円とする。
平均額24万5,000円は、2017年9月分の厚生年金保険料額表の16等級、報酬月額23万円から25万円の範囲に該当する。16等級の標準報酬月額は24万円となり、育児休業以前の標準報酬月額34万円に対応する21等級からは1等級以上下がった。いずれの月も、支払基礎日数は17日を超えている。
この場合は要件を満たしているので標準報酬月額は改定され、9月から適用される。7月から12月の間に改定されたことにより、適用は翌年8月までとなる。月々の保険料は34万円に9.15%を掛けた額、3万1,110円から24万円に9.15%を掛けた額、2万1,960円に下がる。
文・ZUU online編集部/ZUU online
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