【今週の一冊】

「日本のオールターナティブ:クラークが種を蒔き、北大の前身、札幌農学校が育んだ清き精神」(藤田正一著、銀の鈴社、2013年)

昨年9月のこと。衝動的に「飛行機に乗って旅行したい!」と思った。それもそのはず。コロナ前は年に一度は飛行機の旅をしていたから。そこで色々考えた末、札幌へ出かけた。

選んだ理由は単純。①飛行機に乗って窓側シートから本州や海を眺めたい、②ミュージアムに行きたい、③人が少ないところに行きたい、である。その3つをかなえてくれた旅だった。

札幌でまず向かったのが北海道大学総合博物館。私はもともと明治期における日本人の英語学習に興味がある。北大はクラーク博士の指導の下、多くの日本人が必死に学んでいるのだ。そうした資料を見たくて足を運んだ。館内には当時の学生たちのノートなどが展示され、北大の由来や教育方針などが実によくわかった。

今回ご紹介するのは、北大の歴史的変遷を知ることができる一冊。北大の初期を支えた学生たちである内村鑑三や新渡戸稲造についても記されている。”Boys be ambitious”で知られるクラーク博士は、実は8カ月しか札幌に滞在していなかった。しかし、多くのことを後進たちに残している。

中でも印象的だったのが、クラーク博士着任当時のエピソード。設立にあたり既にできていた細かい校則案を見た博士は、「こんなもので人間が造れるか、『Be gentlemen』 この一言で十分だ」(p54)と言ったとされている。つまり、こまごまとルールを作るのではなく、一つしっかりとした哲学を示し、それを軸に学生たちが自ら考える大切さを唱えたのだ。ちなみに東京都練馬区にある私立・武蔵高等学校・中学校の理念は「自調自考」である。北大に通じると思う。

今の時代、ルールやマニュアルなどが世の中にはたくさんある。しかし、本当に大事なのは、簡潔な原則に基づき、自ら考えて生きることなのではないか。そのような読後感を得た。


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