研究チームは19年に、炭素-炭素結合の切断を容易にする新しい分子構造を提案し、ビニル系プラスチックの高効率なケミカルリサイクルに初めて成功した。しかし、分解に数日間の加熱を要するなど実用化に向けた課題が残っていた。

 今回、ビニル系プラスチックが分解するメカニズムを調べ、強アルカリ性条件ではビニル系プラスチックが5分以内に完全分解することを突き止めた。

 また、ビニル系プラスチックと同一の原料からポリエステルを合成することにも成功した。ポリエステルは主骨格に酸素を含むプラスチックで、ビニル系プラスチックとは異なった性質を示す。例えば、ビニル系プラスチックは132度で、ポリエステルは60度で軟化する。得られたポリエステルを強アルカリ条件で処理するとすぐに分解して原料物質(酢酸、サリチル酸)を再生した。

 現在のプラスチックのリサイクルは、プラスチックを溶融して再成形・再加工して製品化するマテリアルリサイクルが主流となっている。だが、マテリアルリサイクルでは酸化・光分解による分子の変性や汚染による品質低下に対応することができない。このため、恒久的な資源再生は不可能だとされている。