家計の電気代には地域差があります。電力会社による電気料金の違い、選ぶプランの違い、地方特有の使い方によって、年間で8万円もの差が。都市別の電気代をランキングで紹介します。

電気代には地域差がある

東京電力や関西電力など、いわゆる「大手電力会社」は全国に10社あります。この10社の電力会社の電気料金には地域差があることをご存じですか? また、寒い地域では暖房の使用頻度が多くなり電気代がかさむなど、電気の使い方によって毎月の電気料金は変わってきます。移住を検討している地域の電気料金の相場を把握しておくことも大切ですね。

最近は電力の自由化が進み、電力業界にさまざまな企業が参入してきました。電気代のお得なプランを提示している企業もあり、電力会社と契約するより電気代が安く抑えられる場合もあります。

電力会社別ランキング 電気料金が一番安いのは?

順位 電力会社 電気料金
1 北陸電力 7,164円
2 沖縄電力 7,708円
3 九州電力 7,708円
4 四国電力 7,821円
5 中国電力 8,034円
6 関西電力 8,181円
7 東北電力 8,528円
8 中部電力 8,540円
9 東京電力 8,866円
10 北海道電力 9,353円

電力会社別に電気料金の差を上の表から見ていきましょう。表では一般家庭で使用した場合の電気料金を安い順にランキングにしました。調査時期は2015年5月で、多くの家庭が契約する「従量電灯プラン」の30Aという規定で、月に300KWhの電気量を使用した場合の電気料金です。

電気の流れる量を表す10A、20A、30A…は数字が大きいほど、1度に動かせる家電の数が増えるイメージです。契約の際に決めることができ、数字が大きいほど毎月の基本料金が高くなります。「KWh」で表す数字は電気の使用量です。

電気料金が一番安いのは北陸電力です。電力会社10社の中で最も高い北海道電力と比べると、1ヶ月あたり2000円以上の差があることがわかります。北海道電力の電気料金が高い理由は、基本料金が他社より高く設定されているためです。北海道の原子力発電所「泊発電所」が2012年に停止したことにより、火力発電所の稼働率が増え、火力燃料費が急激に上昇しました。

また、使用電力に応じた単価の上がり方を見ても、北海道電力は「120kWhまでが23.54円、120~280kWhまで29.72円、280kWh以上33.37円」なのに対し、北陸電力は「120kWhまで17.85円、120~300kWhまで21.74円、300kWh以上23.45円」と電気料金の上がり幅にも違いが見られます。

電力会社によって電気料金が違う理由

前記にて北海道電力がなぜ高いのかを簡単に記述しましたが、電力会社によって電気料金が異なる理由は他にもあります。詳しく見ていきましょう。

燃料費の問題

発電にかかるコストは、石炭火力(12.3円/kWh)と水力(11.0円/kWh)が最も安いです。電力会社によって電源構成が違い、仕入れる燃料によって発電にかかるコストも変わってきます。

例えば、北陸電力は石炭、水力での発電が全体の9割を占めているので、電気の基本料金を安く設定できます。それに対して、最も電気の基本料金が高く設定されている北海道電力は、石炭・水力発電が全体の56%となっており、発電コストが高い石油(火力)発電が25%を占めています。さらに、近年、火力発電に不可欠なLNG(液化天然ガス)が高騰しているため、北海道電力の電気料金が上がっているのです。

燃料費調整額の違い

燃料費調整額とは、火力発電の燃料の価格変動を電気代に反映させる費用のことです。毎月電力会社ごとに設定されており、『燃料費調整額 = 燃料費調整単価 × 使用電力量』で算出されます。発電に必要な燃料の使用量でも、地域差がでてしまうのです。東京電力と中部電力を比較すると、2015年5月の場合、東京電力の燃料費調整額が1kWhあたり1.85円なのに対し、中部電力は1kWhあたり0.76円となっています。

発電所からの距離(送電ロス)

発電所からの距離が遠いことが、北海道電力や東京電力が高い理由のひとつです。例えば、東京電力の場合、発電所の所在地が千葉県、茨城県、福島県、神奈川県など、需要の多い都内からは遠距離にあります。すると、発電所から送電する間に、変電所までの送配電線の抵抗によって電気エネルギーは熱や振動として失われてしまう「送電ロス」が起きます。送電ロスが大きくなれば、その分の電気を起こさなければいけないため、燃料費もかさみ電気料金も上がってしまいます。

発電技術(廃熱ロス)

発電所で、電力転換時に使いきれなかったエネルギーが熱として放出されています。通常発電所からの廃熱は数十℃程度のもので、工場などでの再利用には適さないため、海洋に無駄に廃棄されているのです。それを「廃熱ロス」といいます。

この無駄に捨てられている廃熱を極力少なくする技術、もしくは廃熱を回収し再び電力に変換する技術があれば、熱の再利用(ヒートカスケーディングシステム)ができ非常に効率が良くなります。そうすれば発電コストの低下も期待できるでしょう。

送電設備費用

発電所から電気を使用する場所までが遠いと、送電するための設備(変電所、電線、鉄塔など)がたくさん必要になります。それに伴い、建設費用とメンテナンス費用がかさむことで、電気料金も上がってしまいます。

311福島の原発事故の影響も

2011年3月11日以降、全国のほぼすべての原発の稼働が停止され、電源構成が変わりました。北海道電力も火力発電所の稼働率が増え、2013年9月に電気料金の改定により値上がりとなりました。他の電力会社も原発が停止している事情は同じです。

また、東京電力は福島第一原子力発電所事故の収束処理、賠償費用を負担することになったため、さらに電気料金の値上げを余儀なくされました。