退職金額に応じた使い方の例 

厚生労働省が公表している「平成30年就労条件総合調査 結果の概況(2018)」によると2018年の大学・大学院卒の管理・事務・技術職における定年退職での平均退職給付額は1,983万円でした。企業によって退職金額は大きく異なるため、ここでは「500万円」「1,000万円」「3,000万円」に分けて退職金の使い方の例を紹介します。

500万円の場合は生活費に 

生命保険文化センターが公表している「令和元年度生活保障に関する調査(2019)」によると2019年度における夫婦2人の老後に最低必要になる日常生活費の平均は、約22万1,000円です。また、2018年度の受給権者平均年金月額は14万3,761円のため、約7万7,000円が不足する可能性があります。退職金が500万円で十分な貯蓄がない人は、生活費に充てたほうがいいでしょう。

ただし、500万円の退職一時金を不足分となる月7万7,000円ずつ切り崩す場合、約5年5ヵ月で底をつきます。そのため、生活費を抑えて不足分を減らす工夫が必要です。

1,000万円の場合はローン返済に充てる 

退職金が1,000万円で住宅ローンの残債がある場合は返済に充てることがおすすめです。月々の返済がなくなれば家計に余裕ができてきます。月約22万1,000円の最低日常生活費に、例えば7万円の住宅ローン返済が含まれている場合、完済後の生活費は毎月約15万1,000円です。年金で大部分をまかなえるため、老後の生活にゆとりを持てます。

また、余った退職金を生活費に充てることで安心感が増していきます。ただし、医療費が増える可能性があるため、貯金が少ない場合は生活レベルを上げないことが大切です。

3,000万円の場合は投資もあり 

3,000万円以上の退職金を受け取れる企業はごく一部です。また、3,000万円もの退職金を受け取れる人は年収も高いことが予想できるため、十分な貯蓄がある可能性も高くなります。もちろん退職金額と年収、貯蓄が必ずしも比例するわけではありません。しかし、3,000万円以上もの退職金があれば投資で増やして子どもに遺したり悠々自適な老後を実現したりすることが期待できるでしょう。

ただし、住宅ローンが残っている場合は完済することが大切です。老後は、健康状態が悪化するリスクがあるため、できる限り生活費は抑えたいところです。手術や入院の差額ベッド代、自費診療などで数百万円もの医療費がかかる可能性もあります。リスクを減らしたり保険でカバーしたりしたうえで投資など資産運用を検討してみることも方法の一つです。

退職金の額はそれぞれ、適切な使い道を考えよう

受け取れる退職金は企業によって大きく異なります。大体の退職金額を確認したうえで将来の運用方法や使い道を考えておきましょう。退職金を適切に扱わなければ老後の生活でお金に困るかもしれません。現在の貯蓄額や老後までに貯まる金額、保険の種類、生活費などを踏まえて退職金の使い方を考えましょう。

文・加藤良大

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