「幸せにしてもらう」ではなく「自分で幸せになる」

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

高橋さん

遺伝子的な運命の人は存在せず、性格的な相性も現状ない。そう考えると、結局正解はないのでしょうね。

個人的な意見ですが、大切なのは「主体的でいること」だと思います。

結婚相手に幸せにしてもらうのではなく、「自分で幸せになる」という前提に立ち、「この人と自分の人生を幸せにする」という意志を持てるかどうか。

そうやって「この人と絶対に良い人生を過ごす」と先に決めてしまえば、歩み寄れるし、思いやりも持てるのではないでしょうか。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

高橋さん

例えば「この会社でよかったのかな」と悩みながら仕事をするよりも「この会社の経験を絶対に良いものにする」と決めてしまう方が圧倒的にパフォーマンスは上がります。

結婚も同じで、「この道は正解だったのだろうか」と考えていると、あまり上手くいかない気がしますね。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

前野さん

おっしゃる通りで、「主体的な人は幸福度が高い」という研究結果はたくさんあります。自己決定が幸福度を高めるのは間違いありません。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】
(画像=『Woman type』より引用)
「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

前野さん

「幸せにしてもらう」のではなく、「幸せになる」という主体性を持てば、自分が幸せを感じるためのイベントを企画したり、自分から感謝の言葉を伝えたりといった行動が生まれます。

そうして「いつもありがとう」と言い合えば、そこに感動が生まれるわけです。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

前野さん

待つのではなく、主体的に感謝、承認、尊重、尊敬、信頼といった思いを伝え合い、幸せを感じるセロトニンやオキシトシンなどの愛情ホルモンが出る状態をつくる。

幸せだと感じるかどうかは感性の話ですが、そこでも大切なのは主体性なのです。

ーー主体的に愛情ホルモンが出る状態をつくることで、幸せを感じる状態を意図的につくる。その結果として、パートナーが自分と相性の良い「運命の人」になっていくとも言えそうです。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

高橋さん

結局、人は生きて死ぬだけです。だったら自分が送りたい人生にした方がいいじゃないですか。

人生の手綱は自分しか握っていないので、現状を変えることは自分にしかできません。「最近つまらない」「何か良いことないかな」というのも、他責思考です。

感動が降ってくるのを待つのではなく、自分が行動を起こすことで感動を得ようとする。その姿勢は結婚に限らず、生きる上で最も大事だと思います。

ーー結婚に限らず、「幸せに生きる」ための根底に主体性があるのですね。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

高橋さん

その行動は、本当に小さなことでいいと思います。

夫婦間の不満の多くは「やっておいてほしかったのに、やってくれなかった」など、相手に対する期待値を上回ってないことからくるものです。

でも、そもそも「やってほしい」と伝えていないことはとても多いですよね。

他人だから、言わなければ分からない。その前提で、ちょっとした期待や不満をその都度軽く共有することだけでも、主体性を取り戻す一歩になる気がします。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

前野さん

同感です。嫌なことに触れないようにした結果、不満が積もり積もっている夫婦は特に日本に多いように思いますね。

実際に「我慢は幸せになりにくい」という研究結果もあります。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

高橋さん

幸せな気持ちは増幅させればいいけれど、他人である以上すれ違いは必ずあります。

我慢せず、負の感情を蓄積させない意志を持つことは重要ですね。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

前野さん

僕は高橋さんが経営するジーンクエストで遺伝子解析をやったことがあるのですが、結果を夫婦で共有するのもいいだろうなと思います。

「遺伝子解析上、相手はこういう性格だからこの部分は割り切ろう」など、判断材料になりますよね。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

高橋さん

私も夫婦で遺伝子解析をしました。特に睡眠の項目はおもしろい違いでした。

人によって睡眠のタイプは異なり、私は夜型で長時間の睡眠が必要ですが、夫は何時に寝ても絶対に朝に目が覚める。

遺伝子的にそういう体質傾向だと分かったから、朝の育児は夫担当にしています。

そうやって人と人がお互いの違いを受け入れるためのツールとして、遺伝子解析も活用してもらえると個人的にはうれしいです。

「運命の人は主体的につくるもの」幸福学×生命科学研究者に聞く働く女性の結婚と幸せ【前野隆司×ジーンクエスト高橋祥子】

前野さん

日本では3組に1組が離婚するというデータがありますが、我慢して婚姻関係を継続している人もいるでしょうから、大雑把にいうと幸せな結婚をしているのは半数程度かもしれません。

でも、結婚は夫婦の関係性ですから、大前提としてコミュニケーションの面での努力は必要です。もっと良い関係性を築く余地は相当あると思いますね。

【Profile】
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授/幸福学者
前野隆司さん
1984年東京工業大学工学部機械工学科卒業、86年東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同年キヤノン株式会社入社、93年博士(工学)学位取得(東京工業大学)、95年慶應義塾大学理工学部専任講師、同助教授、同教授を経て2008年よりSDM研究科教授。11年4月から19年9月までSDM研究科委員長。この間、1990年-92年カリフォルニア大学バークレー校Visiting Industrial Fellow、2001年ハーバード大学Visiting Professor

株式会社ジーンクエスト代表取締役
高橋祥子さん
2010年京都大学農学部卒業。13年東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻博士課程在籍中に、遺伝子解析の研究を推進し、正しい活用を広めることを目指すジーンクエストを起業。15年同学博士課程修了。18年株式会社ユーグレナ執行役員バイオインフォマテクス事業担当就任。受賞歴に経済産業省「第二回日本ベンチャー大賞」経済産業大臣賞(女性起業家賞)、「日本バイオベンチャー大賞」日本ベンチャー学会賞など。その他科学技術・学術政策研究所「科学技術への顕著な貢献2015(ナイスステップな研究者)」、世界経済フォーラム「Young Global Leaders 2018」、フォーブス30歳未満のアジアを代表する30人「30 Under 30 Asia」、Newsweek「世界が尊敬する日本人100」に選出など。著書に『ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか? 生命科学のテクノロジーによって生まれうる未来』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』(NewsPicksパブリッシング)がある


提供・働く女のワーク&ライフマガジン『Woman type』(長く仕事を続けたい女性に役立つ、キャリア・働き方・生き方の知恵を発信中)

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