皆さんこんにちは。

今回は、ポストエディット座談会の中で行ったQ&Aセッションの内容をご紹介します。

Q1:ポストエディットは受けない方針の翻訳者もいらっしゃると聞きます。ポストエディットの仕事ばかりになってしまうと、翻訳能力にいろいろと良くない影響があるということのようですが、実際にどう思われますか。また、翻訳者にとってどういったポジティブな面があると思われますか。

Cさん:
私はポストエディットも翻訳もいただいた仕事はなるべくお受けしたいと思っています。ただ、個人的には、ポストエディットの方が苦手です。翻訳であれば全力でやれますが、ポストエディットの場合、どこまで修正するかなど非常に迷いますし、考えることが多い気がします。ポジティブな面は、ポストエディットを受けることで、機械翻訳がどこまで進んでいるのかを知る良い機会にはなるのかなと思います。

Bさん:
私はポストエディットを積極的に受ける方針です。今後、ポストエディットの案件が増えてくるでしょうから、最初から受けないと言ってしまうと、もう仕事が来なくなるのではと思っています。あとは、最新のトレンドについていくことも翻訳者として必要なのかなと思います。ネガティブな面は、機械翻訳の訳文からスタートすると、どうしても表現が画一的になってしまうので、自分の日本語まで影響を受ける可能性があります。ポジティブな面は、極稀に、自分の訳よりも機械翻訳の方が良い訳が出てくる場合があり、「こういう訳もあるんだ」と気づくところがあります。

Aさん:
私はポストエディットを受けない方針の方がいるのは、すごく理解できます。ポストエディットばかりやっていると、自分で一から翻訳する能力が落ちてしまうのではと心配しています。私がフリーランスとして翻訳の仕事を始めた12年前は、医薬分野では翻訳支援ツールがほとんど使われていませんでしたが、今では当たり前のように使われています。それを考えると、これから10年後、ポストエディットは今以上に進んで、治験関係の資料などは、すぐに機械翻訳でできるようになると思うんです。そうすると、やっぱりどうしても避けてはいられません。ただ、利点を考えると、今後機械翻訳や翻訳支援ツールがより発展して、翻訳メモリだけでなくネットから最新情報を拾いながら訳語を選んでくれるようになると、検索する手間が省けるので、専門分野の知識がなくても知識をつけるスピードが早くなり、自分の専門ではない分野でも入りやすくなると思います。ですが、翻訳力の衰えには注意すべきだと思います。翻訳支援ツールが導入され始めたころ、ベテランの翻訳者さんが「80点の翻訳ができる人が40点の翻訳をリライトしても、50点や60点のものしかできない」とおっしゃっていました。つまり、機械翻訳の訳文を上手な人がリライトしたとしても、元が酷かったとしたら、自分で一から翻訳したものと同じ水準にはならないということです。そう考えると、ポストエディットだけを続けていくと、どうしても翻訳力が衰えるので、そこをどうやって補っていくかが課題になると思います。今後、ポストエディットが主流になった場合、自分が翻訳者としてどうやっていきたいのか、ポストエディットだけで頑張って食べていくのか、それともポストエディット化しないような分野の翻訳をやりたいのか、少し先のことも考えていかなければいけないなと思います。

Q2:時間が限られている中で、調べものについてはどの程度調整しているのでしょうか。

Aさん:
調べものについては、翻訳する際とそれほど変わりません。それが分からないと先に進めない場合は先に調べますが、そうでない限りは、仮訳して最後に戻って調べるとか、そういった方法で進めますね。

Bさん:
私もリサーチについては翻訳とポストエディットで変わらないですね。ただ時間が限られていますので、絞り込み検索を活用します。調べたい単語だけを入力すると、広く出てきてしまうので、その単語の次に分野の単語を併記して絞り込むなど、そういった工夫をしています。

Cさん:
私もポストエディットも翻訳も変わるべきではないと思っています。ただ、ポストエディットでは時間が限られているので、ポストエディットでは翻訳のように納得いくまで調べることが難しいこともあるかと思います。

テンナイン:
弊社では、ポストエディット後に必ずチェッカーによるダブルチェックが入りますので、リサーチしきれないけれど、弊社に時間延長を申し出るほどでもないという場合は、「この単語についてはここまでしかリサーチができませんでした」などと申し送りをしていただき、チェッカーさんに託すというのも1つの手なのかなと思います。