特定支出控除とは何か?

自営業で必要経費の実額控除が認められているのに給与所得者は法定の概算控除しか認められないのは不公平だという批判を受け、一定の実額控除を認めたものが「特定支出控除」だ。 

特定支出控除では、一定の経費の合計が給与所得控除の半分を超える場合、その超えた部分を給与所得控除に加えることができる。 

一定の経費には、通勤費、研修費、転勤に伴う転居費などがある。2013年からは弁護士や税理士などの資格が仕事に必要ならばその資格取得費、仕事関係の図書費や衣服費、交際費などが追加された。2018年税制改正では、単身赴任者の帰宅旅費の回数に制限があったのを撤廃し、職務上の旅費も認められることになった。

適用される金額が高く、会社から支出の証明書をもらって確定申告する必要があることなどから、現状の利用者は多くない。財務省の資料では2016年で1522件にとどまる。しかし、2013年の改正までは一桁台であったことを考えると範囲次第で大きな影響を与えることが予想される。

2018年税制改正でも、給与所得控除の縮小と抱き合わせるように範囲が拡大された。今後も給与所得控除が高すぎるとの理由で縮小される中で、実額控除がどのように認められていくのか注目する必要がある。

給与所得控除縮小が続く可能性

高所得者への増税は社会に認められやすい。税には富を分配する機能があるからだ。

では、どの年収以上が高所得者なのか。2017年12月に一度、増税対象者が「年収800万円以上」と報道された。その後、与党内で調整が図られ年収850万円以上となった経緯がある。しかし、これは政治的な線引きの結果に過ぎず、今後も増税対象となる年収額は高くなる可能性がある。

また、2018年税制改正は「働き方の多様化に合わせた」という大義名分を掲げている。現行の税制は、給与、事業、年金といった所得別で取り扱いが異なっている。政府税調は、所得ごとの取り扱いの差をなくし、どのような働き方でも適用される基礎控除などで税額を調整するべきだと報告した。そして、所得の分類についてさらに検討を進めるよう提案している。

そして、サラリーマン、OLの給与所得控除について、財務省も政府税調も実際の支出に比べ高すぎると認識している。また、日本人の実際の支出との比較だけでなく、主要国との国際比較においても日本は手厚すぎるとの見解を示した。政府税調は中長期的にも国際水準への見直しが必要と主張している。

つまり、2018年税制改正の「高所得者の給与所得控除縮小」「基礎控除の拡充」はまだ始まりに過ぎないのだ。今後も、この方向で税制が変わると予想される。具体的には、対象となる高所得者の線引きや子育て世代への配慮、給与所得控除縮小と表裏にある特定支出控除の拡大などが変化する可能性がある。年収「中の上」の層は、今後も税のニュースに注意が必要だ。

文・ZUU online編集部/ZUU online

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