2018年税制改正で給与所得控除が縮小される。基礎控除拡大と相殺される人が多いが、年収850万円を超えると増税だ。対抗するには、既存の節税策に加え、給与所得の特定支出控除にも注目したい。政府は給与所得控除がまだ過大としており、今後も予断は許されない。
2018年税制改正とサラリーマン・OL
2018年の税制改正では、一定の割合のサラリーマンやOLにとっては増税となってしまう。
給与から課税対象額を計算するとき、法で定められた「給与所得控除」額を差し引くことになっている。この「給与所得控除」額がこれまでより一律10万円引き下げられる。さらに年収850万円を超える人は給与控除額の上限額が、これまでの220万円から195万円に引き下げられる。一方、誰にでも適用される基礎控除が10万円引き上げられた。そのため、給与収入が850万円までの人は課税対象額の増減が相殺されて現状維持となる。
源泉徴収票に「支払金額」の欄と並んで「給与所得控除後の金額」欄がある。改正後はこの数字が変わる。
また年収850万円以上でも、23歳未満の子どもがいる子育て家庭などは増税にならないよう調整が図られる。
年収・世帯別税制改正の影響とは
給与所得控除は、年収によって定められた金額が控除される。
具体的な数字とともに見ていこう。年収が360万円超660万円以下であれば、改正後の控除額はこれまでの「収入金額×20%+54万円」から10万円縮小されて「収入金額×20%+44万円」となる。年収660万円超1000万円以下なら「収入金額×10%+120万円」から「収入金額×10%+110万円」となる。
ただし、たとえば年収が600万や700万といった人は、基礎控除が10万円拡大されるため、増減が相殺され新たな負担はない。
増税となる境界は年収850万円だ。年収850万円の人は「年収660万円超1000万円以下」の区分であるため、「収入金額×10%+110万円」の計算が適用される。この計算式に当てはめると控除額は195万円だ。先ほど述べたように、今回の税制改正によって、年収850万円を超える人の給与所得控除額の上限は195万円であるため、年収がこれより増えても控除額はこれ以上増えないのだ。
所得税は課税対象額に税率を掛けた金額だ。税率は、課税対象額が大きい人ほど高くなる。課税対象額は社会保険料控除などによって異なるが、年収850万円前後の人は税率20%になる場合が多い。なお、地方税の税率は所得にかかわらず10%だ。
例えば、年収900万円では、課税対象額が5万円増える。税率は所得税20%と住民税10%を合わせて30%となる。したがって1万5000円の増税となる。年収1000万円では、課税対象額は15万円増える。所得税と住民税を合わせて4万5000円の増税だ。
年収1000万円を超える人は改正前から既に上限があったため、増える課税対象額は15万円で一定となる。しかし、年収が高くなると今度は所得税率が高くなる。
一概に言えないが、年収1500万円では所得税率は33%となるケースが多いだろう。この場合、所得税率と地方税率合わせて43%となり、増税額は合計6万4500円にのぼる。
所得控除は税率が高い高所得者に有利な制度だが、逆に言えば、所得控除が縮小されると高所得者ほど増税額が大きくなる。
世帯で見ればどうだろうか。給与所得控除縮小とは別に、既に2018年から配偶者(特別)控除が大きく見直されている 。世帯主と配偶者の所得の組み合わせで決まるようになった。配偶者特別控除が適用される範囲は拡大されたが、世帯主が高所得だと控除額が減少するかゼロとなる。
ここでは、配偶者(特別)控除を使わない場合を考える。単純にそれぞれの年収が850万円までだとすると税の負担は増減しないが、どちらかが850万円を超えると増税となる。夫婦ともに高所得だと増税額は大きい。ただし、23歳未満の子どもがいれば増税の対象とならない。