医療と年金で節税対策

増税に対しては節税で対抗するしかない。ポイントは医療保険や年金制度関係の節税対策だ。

医療費については、以前から、医療費支出が大きかった年の納税額を低くできる、「医療費控除」という制度がある。具体的には、実際に負担した医療費が10万円を超えると、その超過分が所得控除の対象となる。2017年からは、この医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」が始まった。普段から病気予防に努め、医療機関を受診せずに、対象となる市販薬で治療すれば、その市販薬の代金が所得控除となる(ただし、年間)1万2000円を超えた支出した場合に限る)。

続いて年金制度関係であるが、2017年からはサラリーマンも個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できることになった。この制度を利用し、自分で年金を積み立て運用すると税の優遇を受けられるのだ。年金として受け取る遠い将来だけでなく、現在支払っている掛け金が現在の所得税の所得控除の対象となる。

「iDeCo」は銀行預金なども対象だ。リスクを取りたくない人は銀行預金からでも始めてみよう。所得控除は現在のところ確実に受けられる。10万円預ければ10万円所得控除となるが、加入している企業年金の種類によって拠出限度額が異なる点だけ確認しておこう。

所得控除全般について言えば、サラリーマンは原則として年末調整で所得控除を受けるので、会社に知らせていない扶養控除や保険料控除があれば申告しておくべきである。

さらに、寄附をしたり災害にあったりすれば、それぞれ「寄附金控除」や「雑損控除」の対象だ。「住宅ローン控除」は控除される分だけ税金を減らせる「税額控除」であり節税効果が高いので、当てはまる人は必ず活用したい。これらは確定申告が必要で面倒に感じるかもしれないが、アメリカなどでは国民全てが確定申告を行っている。

給与所得控除と表裏にある制度

このように現状では、給与所得控除以外の控除を使った節税策の方が利用しやすい。しかし、給与所得控除の縮小と深い関係にある節税策もある。

給与所得控除はサラリーマンの必要経費とされる。法が定める給与所得控除は大ざっぱな見積額で「概算控除」と呼ばれる。しかし、財務省はサラリーマンの必要経費について具体的な数字をはじき出している。

政府税制調査会(政府税調)に対して財務省が提出した資料では、サラリーマン・OLの経費にあたる額は平均25.2万円と推定されている。総務省統計局の「家計調査」から、財務省が給与所得者の必要経費にあたりそうなものを抜き出した額だ。(第13回税制調査会 財務省説明資料(所得税)より)。この数字について、政府税調の2017年11月20日の中間報告においては、「現行の給与所得控除と比べて相当程度低い水準となっている」とされている。

財務省の「概算控除額が実際の支出よりも大きすぎる」という主張は、裏を返せば「概算ではなく実際の支出額を認めるべきだ」ということでもある。必要経費を実際の支出額で控除することを「実額控除」という。自営業の所得税の計算では必要経費は実額控除だ。そして実は、サラリーマン・OLにとっても「実額控除」の制度が存在する。そして、2018年税制改正でも概算控除を縮小する一方で、この実額控除の範囲は拡大されているのだ。