候補者のコンピテンシーを見抜くコツ
また、実際の面接は、このジョブディスクリプションに基づいて行います。
アマゾンで特に重視していたのは、コンピテンシーの項目。まさにEさんが悩んでいる、人柄にあたる部分です。では、面接の場では、仕事に必要なコンピテンシーがあるかをどうやって見抜けばいいのか。
まず一つは、質問の仕方です。
例えば、必要なコンピテンシーが「自主性がある」だとすると、「自主性」を候補者が発揮した例を具体的に深掘りして聞いていくのです。
具体的な質問をあげると「あなたが、上司や同僚の仕事を、その人達の代わりにした時のことを教えてください」と聞いてみます。
すると候補者が、次のように答えたとします。
候補者
チームの人員が足りなくて、みんなの残業がとても多くなってしまった時がありました。
資料をそれぞれが作るのに時間がかかっていて、資料作成の時間を短くするために、チーム全員が使える共通のテンプレートを私が自ら作って皆に使ってもらいました
それに対して、面接官は次のような質問を重ねます。
面接官
なぜ、それが役に立つと思ったのですか?
面接官
実際にどんな内容を入れたのですか?
面接官
テンプレートを作って、実際どれくらい時間短縮されましたか?
このように、相手の回答を受けながら、どんどん深掘りして質問していくのです。もしここで話している内容を本当にその人が責任をもってやったことなのだとすれば、深堀りすればするほど話が続きます。
逆に、本人が自主的にやっていないことだったり、他人の行いをまるで自分が行ったことかのように話している場合、ディテールが答えられないのです。
このように、実際のケースを深掘りしていくと、候補者に必要なコンピテンシーがあるかどうか分かるようになっていきますね。
また、相手の話をどんどん引き出すコツとして、相槌の打ち方にもあるテクニックがあります。
相手が何か話をしたときに「そうですか」とただ返事をするのではなく、「なるほど、それは素晴らしいですね」と評価する言葉を付け加えてみてください。
すると、候補者の方もうれしくなって、細かいところまで話してくれるようになっていきますよ。
そして、質問案は土壇場で考えるのではなく、事前にいくつか準備しておくのがベスト。ジョブディスクリプションと、その仕事に必要とされるコンピテンシーに対応する質問内容を用意しておきましょう。
例えば、「行動力がある人」を採用したいなら、「データなど自分にとって必要な情報がそろっていない中で、自分で判断して行動をとらなければならなかった例を教えてください」と聞いて、なぜ、どうやったか、などを深掘りして聞く。
「チームワークを大事にする人」を採用したいなら、「チームメンバーから信頼されるために、自ら進んで行ったことを教えてください」と問い掛けてみる。これも、取り組んだ理由や目的達成のためにとった手段、実際にやってみてどうだったかを重ねて質問していきます。
そうすると、候補者に求めるコンピテンシーがあるのかどうか、どんどん分かるようになります。
採用成功のカギは、「自分より優秀な人」を恐れずに採ること
候補者の業務実績だけでなく、どういうコンピテンシーを持っている人なのか(=どういう行動をする人なのか)ということを正しく理解してから採用すると、ミスマッチが減っていきます。
また、面接の担当者が複数いる場合、各担当者がそれぞれ別のコンピテンシーを見ていくという方法もあります。すると、その候補者の強み・弱みが浮き彫りになっていくものです。
もちろん、強みだけの人はいません。たとえ弱みがあっても、「この人を採用する」と決断する場合もあると思います。
その場合も、その人がもともとどんな弱みを持っているか分かっているので、入社後に、その弱みをどうトレーニングして改善していくか、もしくは、それをどうやってカバーしていくのか計画しておけますね。
私もマネージャーになりたての頃は、深掘りが足りなくて、採用で失敗した経験があります。
特に新しいビジネスを始めたばかりで、なんとかその業界の経験者をとりたいと思い、「業界の経験者・その業界でのスキルがある人」を優先して採用し、コンピテンシー(行動)を二の次にしてしまった事がありました。
入社当初は、その方も業界の経験を生かして結果を出してくれたのですが、チームにフィットせず、結果的に長く在籍してもらえなかったのです。
そうなると、またそのポジションを埋めるために採用活動をしなければいけなくなるので、時間とコストが相当かかってしまいますよね。
それ以降、必ず深掘り質問を重ねて、コンピテンシーを重視した面接をするようになりました。
また、面接に関して大事なことは、「面接官が候補者を知る」だけでなく、「候補者が会社を知る」機会でもあると心得ておくこと。
もしも採用に至らなくても、今後その候補者の方が、お客さまや取引先、社外のビジネスパートナーになる可能性もあるのです。
従って、候補者の方に「いい会社だったな」と思ってもらえるように、リラックスした雰囲気で、丁寧に誠意を持って面接を行うことが必要です。
アマゾンでは「自分より優秀な人を採用する」という共通のゴールがありました。自分より優秀な人は、自分のポジションをとられるようで、怖いと思われるかもしれません。
でも、そんな方を採用できると、Eさん自身が楽になり自信を持て、次のステップに上がれるようになります。そして何より、Eさんのチーム、そして会社もパワーアップしていきます。
採用は管理職の仕事の中でも難しいタスクですが、ぜひ、自分より優秀な人材を採用できるよう、深掘りの面接を試してみてください。
You can make it!
書籍紹介
『amazonのすごいマネジメント』(宝島社)
「なかなかチームで結果を出せない」「部下が無難な数値目標ばかり出してくる」など、管理職の方々のチーム運営に関する悩みを、ジェフ・ベゾスが生み出したアマゾン流マネジメントで一挙解決! 黎明期のアマゾン ジャパンに入社し、長らく新規ビジネスの立案やブランディングを担当し、現在は起業家として活躍する太田理加、小西みさをによるアマゾン流マネジメントの極意を紹介。
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