原体験と感情をたどった先に、ハッと自分の願いに気付く瞬間がある

ビジョンが言語化できている人は、私の体感では1割も世の中にいないんじゃないかなと思います。たとえ起業家であっても、恐れ起点で起業している人は少なくありません。それだけビジョンを言語化するのは難しいことです。

ただ、働き方改革や副業が盛んになりつつある今、ビジョンを仕事に体現しようとする流れが生じています。

これまでは「恐れ起点」で会社に尽くさなければいけない時代だったかもしれないけれど、これからは会社の外で自分を表現することも可能です。

また、社会でマイノリティーとして生きている女性は、メインストリームにいる男性よりもビジョンに向き合いやすい立場にいるとも思います。何も考えずに働いていても流れに乗れるということ自体が、現状ではそもそも少ないですから。

ポストコロナ時代を生き抜く鍵は“健全な絶望感”「自分のピュアな気持ちに耳を傾けて」
(画像=世界中の社会起業家が集まったペンシルバニア大学主催のグローバルアクセルレータープログラムにて、『Woman type』より引用)

自分の内にあるビジョンをクリアにするためには、自分の過去を見つめる作業が必要です。過去にさかのぼり、好き嫌いや価値観を紐解き、言語化をしていくことで、だんだんとビジョンは見えてきます。

特に意識してほしいのが、感情です。日常の感情を気に留め、「どうしてあの時にこう思ったんだろう」と突き止めていくと、過去にヒントが見つかります。

中でも、目を向けたくない過去や、毛嫌いしている経験がビジョンの根源になることは多いもの。

人間は誰しも向き合いたくない過去の体験から避けるための意思決定をするので、そこに向き合わず、社会に適合する方が楽ではあります。でも、自分の根っことなる原体験を紐解くことで、ハッと自分の願いに気づく瞬間があるはず。

また、何か解決したい問題があるのであれば、なぜそれを解決したいと思うのか、理解を深めてみてください。そうすると、実は自分が当事者であるパターンも多いんですよ。私も教育プログラムの事業をやるのは、自分のためでもありますしね。

他に、直感的な感覚も大切です。「この感覚が好き」「何だか怒りを感じる」など、心が動く瞬間に注目してみてください。

世の中で影響力のある人が何を言っているのかを知り、どういう意見に自分の心が動くのかを探るのもおすすめです。その感情の根源には、きっとあなたのビジョンがあると思います。

「大人は変わらない」なんて嘘。誰でも絶対に変われる

私たちはつい年齢を言い訳に使ってしまいますけど、これからは年齢が関係ない世の中になっていきます。何歳になっても学び続けなければいけないし、コンフォートゾーンを超えていかなければいけない。

自分のビジョンを理解して、それに向けて動くことの重要性は、何歳であろうと同じです。「若いうちにいろいろな経験をしよう」「若者は苦労を買って出ろ」といった考え方に違和感を私は持ちます。

そして、大人は変わらないと言われますけど、私は「年齢に関係なく、誰でも絶対に変われる」と確信しているんです。

3月に行った『Project MINT』のプロトタイプ版に参加してくれた最年長は、50代の男性。彼は大手企業の人事として働いていて、将来的には独立して社会人教育やコーチングをやろうと考えていました。

ただ、彼の過去を紐解いてたどり着いたのは「子どもの笑顔を大切にしたい」だったんです。お金儲けのための教育ではなく、次世代の子どもたちがハッピーでいられるための教育。同じ教育でも、全くの別物ですよね。

彼は現在、子どもの教育をテーマにした企業で複業をしていますが、変わる動機になるのがまさしくビジョンです。そしてビジョンに目覚めた時の伸びしろは、むしろ大人の方が大きい。

ポストコロナ時代を生き抜く鍵は“健全な絶望感”「自分のピュアな気持ちに耳を傾けて」
(画像=未来の働き方について語るパーソルキャリア、ベンチャーカフェ主催の「脱・働く セッション」イベントに登壇、『Woman type』より引用)

「変わりたい」という気持ち自体は、誰しもが持っているものだと思います。そして、人はいつでも変わることができる。では、実際に変われる人とそうでない人は何が違うのでしょう?

それは「自分で責任を持って意思決定をしていくんだ」という心構えなのではと私は思っています。

変わるのは自分ですから、自発的に行動を起こすのが第一歩。まずは「この会社に入れば」「この人と付き合っていれば」といった、外部への依存から脱却する必要があります。

つまり「これからの人生は一人だ」という、健全な絶望感を持つこと。不確実な時代だからこそ、他者に頼ってはいけないのだと思います。

特に女性は「男性に養ってもらう」という、ステレオタイプが少なからずあります。でも、今は男性すら不安定なわけで、どう養ってもらうんですか? って話ですよね。

あなたは社会を構成する一員であり、あなたの問題解決のアプローチが世の中への貢献につながる。

それを理解し、多様性の一部として、あなたなりの「こういう世界をつくりたい」というビジョンを持って突き進むこと。それが世の中を良くすることであり、自分自身の糧にもなるはずです。

繰り返しますが、ビジョンは誰もが必ず持っています。ですから、まずは「ビジョンはある」と信じてください。「ビジョンがない」のではなく、「これからビジョンをつくっていく」という考え方を持って、自分に向き合ってください。

ポストコロナ時代を生き抜く鍵は“健全な絶望感”「自分のピュアな気持ちに耳を傾けて」
(画像=<Profile> 株式会社Project MINT 代表取締役社長 植山智恵さん
埼玉県生まれ。津田塾大学卒業後、ソニーに入社。2015年に渡米し、サンフランシスコで、ソニーの新規教育系スタートアップで米国市場進出、教育テクノロジー事情の調査に従事。同社を退職し、米ミネルバ大学大学院に入学。19年、ミネルバ大学大学院修士課程を修了(Master of Science in Decision Analysis専攻)し、日本に帰国。同年、Project MINTを立上げる。EdTechWomen Tokyoファウンダー。Forbes Japanオフィシャルコラムニストで主に次世代の学び方について記事執筆、『Woman type』より引用)


提供・働く女のワーク&ライフマガジン『Woman type』(長く仕事を続けたい女性に役立つ、キャリア・働き方・生き方の知恵を発信中)

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