繰下げ受給、実際の手取り額は?
繰下げ受給をすれば、年金額は増えていきます。
ところが、いざ70歳で受け取ってみると、
「最大限まで繰下げたのに、42%も増えていないじゃないか。計算が間違っている」
とあわててしまうかもしれません。
じつはこれ、けっして計算ミスではないのです。
ここは事前に踏まえておいていただきたい注意点です。
前述したとおり、年金にも税金がかかります。
所得が増えれば、税金と社会保険料も上がります。
つまり、額面では42%の増額になったとしても、諸々を引かれた手取りは35~32%のアップに留まってしまうわけです。
税金や社会保険料は、その他の収入、扶養親族の有無、各種の控除、居住地域で変わります。
では、どの程度が差し引かれるのでしょうか。
65歳時点で夫の年金額が200万円だとします。
東京都世田谷区に在住の場合、65歳で200万円の収入なら所得税・住民税は0円、社会保険料は16万円となります。
70歳まで繰下げ受給をすると年金は42%アップの284万円ですが、所得税3万円、住民税7万円、社会保険料26万円が引かれ、手取り金額は248万円となります。
いっぽう、妻の方は年金額が100万円で、65歳からの5年間は貯蓄を取りくずすので所得税・住民税は0円、社会保険料は9万円です。70歳まで繰下げ受給すると142万円、所得税・住民税は0円で社会保険料は12万円になり手取り金額は130万円になります。
手取り金額は単身者や夫婦世帯など、それぞれの状況によって異なります。
しかし、いずれにしろ手取りが減ってしまい、思い描いたほど増額になりません。
かといって、繰下げ受給をしないと、年金額は増えません。
ただ、老後生活を長い目でとらえるなら、思ったより手取りが増えないにせよ、年金そのものが少ないよりずっと楽になるはずです。
長尾義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。
お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』(小社刊)、『コワ~い保険の話』(宝島社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)が、監修には別冊宝島の年度版シリーズ『生命保険 実名ランキング』(宝島社)などがある。
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