「繰下げ受給」を知っていますか?
繰下げ受給とは、いったい何でしょう。
公的年金の支給は65歳から始まります。
しかし、65歳0か月で必ず受け取りを開始しなければならないと決まっているわけではありません。
60歳~70歳の間ならば、いつからスタートしてもいいのです。
65歳1か月よりあとにスタート時期をズラすことを「繰下げ受給」といいます。
基礎年金(国民年金から支給される年金の呼称。国民年金とほぼ同義)と厚生年金のどちらか一方を繰り下げることもできますし、両方を繰下げることもできます。
繰下げ受給のメリットは、なんといっても年金額が増えていく点にあります。
増額の割合は、1か月につき0.7%ずつ増えます。
もしも1年繰り下げたとしたら、8.4%のアップになります。
確定利回りで年利8.4%ですから、ハイリターンです。
こんなにハイリターンの金融商品はありません。
逆に65歳より前(60歳~64歳11か月)に年金を受け取ることを「繰上げ受給」といいます。
1か月につき0.5%ずつ減っていきます。
もしも1年繰り上げたとしたら、6%のダウンになります。
さて、70歳まで繰り下げれば、最大で42%も受給額が増えます。
しかも、増額した年金を一生涯受け取れるのです。
また、繰下げ受給は途中で軌道修正が可能です。
70歳まで繰り下げる予定だったものを、67歳から変えても差し支えありません。
また、65歳から支給されるはずだった分を一括で受け取りたいというわがままも聞いてもらえます。
ただし、ここに増額分は上乗せされず、当初の金額になりますが。
デメリットは、早期に死亡すると損をしてしまうこと。
70歳前に亡くなったため、年金を1円ももらえなかったという事態もありえます。
その損益分岐点は約11年です。
81歳0か月の時点で、65歳から受給した場合の総額を上回ります。
65歳男性の平均余命は19.57年ですから、損益分岐点は越えています。
女性はもっと長生きなので、かなり有利な制度です。
とはいえ、デメリットも考え方しだいです。
人は必ず死ぬ運命にあり、時期が早いか遅いかだけの違いです。
早死にすれば資金的なリスクが小さく、長生きするほど資金的リスクは大きくなるともいえます。
公的年金は長生きに備える保険なのです。
公的年金は保険なので財産にはならず、子どもに残すわけにはいきません。
通常は死亡した時点で支給も終わります。
ただし、繰下げ受給をしている途中で亡くなった場合は、遺族が「未支給年金」として請求できます。
その際は、繰下げで増額した金額ではなく、本来の年金額になります。
長尾義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。
お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』(小社刊)、『コワ~い保険の話』(宝島社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)が、監修には別冊宝島の年度版シリーズ『生命保険 実名ランキング』(宝島社)などがある。
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