北米ではヒットした実写版『リトル・マーメイド』ですが、中国では不発に終わりました。また、韓国では「私のアリエルじゃない」という投稿がSNSに次々と投稿され、炎上騒ぎが起きています。中国や韓国では、人魚姫=白人女性というイメージがとりわけ強かったようです。

 ハリウッドでは映画の主人公を白人のスター俳優が独占する時代が長く続き、欧米以外の地域を舞台にした作品でも、それは変わりませんでした。アフリカ系、中南米系、アジア系の役も白人俳優が演じることは「ホワイトウォッシング」と呼ばれ、多様性を求める現代社会では反省すべき課題となっています。アフリカ系のスーパーヒーローが活躍する『ブラックパンサー』(2018年)やアジア系俳優がメインキャストを演じた社会派コメディ『クレイジー・リッチ!』(2018年)がハリウッドで誕生し大ヒットを記録したのにはそうした背景がありました。

ポリコレを強く主張するディズニー社

 ディズニー社も2022年に「ディズニー作品に登場する主要キャラクターの50%を“公平に代表されていない集団”から選ぶ」と公言しています。ハリー・ベイリーがアリエル役に起用されたのには、そんな事情がありました。

 こうしたディズニー社の姿勢に、抵抗を感じる人たちもいます。ディズニーの実写映画『ピノキオ』(2022年)では美しい妖精ブルーフェアリーを、アフリカ系英国俳優のシンシア・エリヴォが演じたところ、やはり反発する声が挙がりました。「ホワイトウォッシング」の逆、「ブラックウォッシング」ではないかというのです。

 SFアニメ『バズ・ライトイヤー』(2022年)はメインキャラクターの1人が同性愛者という設定ですが、同性愛を認めない中国や中東では問題視され、劇場未公開となっています。また、ディズニーの最新実写映画『白雪姫』の主演女優レイチェル・ゼグラーは、母親がコロンビア系であることが知られています。

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