作劇と関係なく、そういうところも気持ち悪かった第119回、振り返りましょう。もちろん作劇も気持ち悪かったよ。
旅費のリアル
生活感という話でいえば、離れて暮らす一般家庭において交通費というのは大きな問題であるはずなんです。愛子と聖人は月2回、佳代さん(宮崎美子)に会うために糸島の実家に帰っているという。
土地勘がないのでGoogle先生に聞いてみたところ、神戸・糸島間の距離は約600km、東京・大阪間より遠いんですね。鉄道で行くなら片道1万5000円以上かかる。2人で月2回往復すると、12万です。テナントと住居の賃料もあるし、翔也(佐野勇斗)に給与も払ってるはずだ。基本的に客はいないし、臨時休業も頻繁にありそうだ。
今回の愛子の家出のきっかけは、聖人が糸島への移住を渋っていることでした。でも、この2人には2週間以内に糸島に行く予定はあるんだよね? 月2回行ってるからね?
「次に行ったときに、3人でよく話そう」
なんですよ、どう考えても。愛子が突発的に糸島に1人で行って往復3万使うことが、もうすでに庶民感覚からかけ離れてるの。私たちが家計のやりくりの中で生活しなければならないのと同じように、庶民から共感を得ようと思ったら、その想定された家計の中で物語を構築するのが脚本家の仕事なんです。
この夫婦の家計については、糸島から神戸に来たときからずっと甘かったんだよな。「客がいなくてご近所さんがたむろしている」と「金が無限に出てくる」という矛盾をずっと抱えてきた。こういう矛盾があるから、糸島の美しい景色の中で愛子と佳代さんが対峙するという美しいシーンにも、入り込むことができない。
老衰のリアル
「佳代さんの本当の気持ちを確かめたくて」
どうして、糸島にずっといたいのか。その問いに対して、佳代さんは「やりたいことがある」と答えます。新しい作物を育てたい、新しい料理を作りたい。いくつになっても夢追い人というわけです。