ーーなるほど。そのメカニズムを考えると、たしかにこのサービス自体を一般化して大量集客を目論むのには、SNSを煽るのが一番ですね。そこに「事件屋」と呼ばれる、他人の紛争に介入することにより、金銭的利益を上げる悪質な業者が入り込んでいるという話を聞いたのですが、ご存知ですか?
小菅 退職代行サービス関連では把握していませんが、「事件屋」は、株主総会における総会屋などのように、その時代でトレンドとなっている紛争を嗅ぎつけて出現します。退職代行サービスをめぐって事件屋が暗躍していても、不思議ではないと思います。
ーーこの件における「事件屋」は、悪質な業者そのものを指すようです。
小菅 退職代行サービス業者を使ったものの結果的にはトラブルになり、もうその手の業者は懲り懲りだとして、弁護士にたどり着く事例は散見されます。そのトラブルの原因が非弁であったり、事件屋であったりすると、利用者も損をしてしまいます。非弁というのは、消費者被害を生むことにつながります。
ーー非弁行為をする業者に頼んでしまうと、例えばせっかく得た慰謝料なども、返金する羽目になりますよね。また、グレーなところを攻めているビジネスなので、裏社会と関わりがある業者も出現してくるかもしれません。「タイパ」をもとめて気軽に利用してしまうと、あらぬトラブルに巻き込まれてしまうリスクがあるということですね。
小菅 退職代行サービスは「必要な人には有用なサービス」ですが、「安いから」「簡単だから」といった理由だけで安易に業者選ぶと、トラブルに巻き込まれる可能性があります。退職時に揉めそうな場合は、最初から弁護士などの専門家に相談するのがベストでしょうね。
(文=大沢野八千代)
■協力者プロフィール
小菅哲宏(こすげ・あきひろ)
弁護士法人若井綜合法律事務所ジュニアパートナー弁護士・税理士。一橋大学法科大学院卒。労働問題の他、SNSを巡る法律問題を広く扱う。士業の専門家責任の相談にも対応している。