そもそも、この「退職代行サービス」とは一体どういうものなのか? 非弁行為に抵触するケースとはどういうものなのか? ーーその実情について、弁護士法人若井綜合法律事務所の小菅哲宏弁護士に聞いた。
退職代行サービスは「タイパ」最強? なぜ広がったのか
ーー 最近、SNSで「退職代行サービスを使って即日退職!」みたいな投稿をよく見かけ、ここ5年ほどで一気に普及した印象があります。このサービスはどんなものなのでしょうか?
小菅 ドラマなどで退職をするときに「退職願」を出すシーンをよく見かけますが、実は法律で書類提出が義務付けられているわけではありません。口頭で告げても構わないんですね。退職代行サービスといわれるものは、第三者が顧客の代わりに、所属企業に対して退職する旨を告げるというものです。退職に伴って発生する、社会保険関係などの書類のやり取りや、社員証やカードキーの返却など物品の受け渡しの代行をすることもあります。ただ、「退職代行サービス」とよく言われますが、正確には「退職”手続き”代行サービス」ですね。
退職に関しては、民法の627条に、”雇用契約の解約の申し入れ”が規定されていて、解約の申し入れ日から2週間経過することによって雇用が終了するとされています。つまり、2週間前に退職を告げれば、自由に退職ができるわけです。なおこれは、雇用期間の定めのない労働者の話なので、有期雇用だと少し変わります。また、いずれの場合でも、やむを得ない事由があれば、即時に退職が可能です。
よく雇用契約書や雇用条件通知書に、「退職する場合は1カ月前に通知してください」などと記されていますが、退職においては、民法の規定や判例が優先されます。そのため、「今すぐ辞めたいのに契約上辞められない」「退職に関する法律をしらない」といった方々も利用されます。
ーーそう考えるとたしかに、法律を元にしたサービスなので労働者にはありがたい仕組みです。正しくこのサービスの有効性が広まるなら、よいことですね。