背景にはテレビ界全体のトレンドもある。フジテレビに限らず、昨今「昭和」や「平成」はヒットを生む1つのキーワードである。
「かつてのヒット曲を歌うカラオケ番組も大増殖しています。2025年がちょうど昭和100年にあたることも、昭和振り返り番組が多い一因です。テレビ局は若者を取り込もうと必死ですが、現実的にはテレビのコア視聴者層は中高年です。手っ取り早く結果を出すには、人口的にボリュームゾーンで発信力もある40~50代に向けた番組を作るのは有効な戦術ではあります」(同)
フジの過去バラエティ、今放送できない「不謹慎」以外の理由
とはいえ過去のアーカイブ映像をそのまま流すのは難しい。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏が、“業界事情”を解説する。
「まず、放送番組の権利問題があります。ドラマは再放送ありきで制作しますが、バラエティ番組の場合、たとえば“3年間に2回放送”など期間と放送回数に制限をつけて制作することが多い。その制限を超えた部分は関係スタッフや出演者に再度交渉し、許諾をとる必要が出てきます。その関係者を全て探し当てるのは困難なのが現実です」
さらに、「音楽」の権利問題もある。
「音楽も再使用の許可をとらないといけない場合があります。つまり、かなり昔のバラエティ番組を今放送するためには、権利関係でさまざまに高いハードルがある。今過去のバラエティ映像が放送されることがあっても、許可がとれた部分だけ抜粋した形のことが多いのは、こうした事情です」(鎮目氏)
また、今の時代に過去のバラエティ番組を放送しづらい理由として、想像に難くないのは“コンプラ問題”だが、「当時の~」などと注釈を入れたとしても難しい――と鎮目氏は言う。
「BPOが、“痛みを伴うものを笑いの対象にして放送するのはいじめを助長する”という勧告を出したこともあり、局はどこも過去映像の再放送には敏感になっています。昔のバラエティ番組は、人の体格や見た目に関する言葉など、今では許されないものが“当たり前”。全体の流れとしても“アウト”なものが多く、SNSで余計な批判を招きかねません」(鎮目氏)