初の朝ドラ出演作『なつぞら』(NHK総合、2019年)のリーゼントスタイルなどを経て、そこからマッシュカット系怒涛のバリエーションが現在までさまざまである。

 槙野役と近似値の髪型だと、落語家役を演じた『昭和元禄落語心中』(NHK総合、2018年)がある。1970年代の時代設定と役柄の年齢に合わせた古風なヘアスタイルだが、槙野役ほどには分け目までくっきりはしていなかった。この分け目、なおさら気になるなぁ。

◆今風のヘアスタイルが異質だった朝ドラ

 さらに近年の作品で岡田のヘアスタイルが話題になったのが、伊藤沙莉主演の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合、2024年)である。伊藤演じる主人公・佐田寅子の伴侶になる同僚判事・星航一役を演じた。

 槙野と同じように同僚役という共通点はあるけれど、肝心のヘアスタイルは全然類似していない。『昭和元禄落語心中』よりさらに前の戦後の時代設定にもかかわらず、航一役の岡田の髪型が2010年代に流行したショートマッシュ風であり、時代考証としておかしいのではないかと話題を集めた。

 確かに裁判官という硬派な職種だし、時代も時代だから、槙野役よりさらに分け目くっきりでもよかったかもしれない。なのに、毛先ぼさぼさ。しかも程よいマッシュ感。今風のヘアスタイルが異質だと、少なからず視聴者の目には映ったのである。

◆くせ者感を明確化するスタイリング

 でもそれは、コミュニケーションなどが独特な空気感の航一の風変わりな人物像を浮き彫りにするためのあえてのスタイリング演出だったと思う。

 第18週第90回で航一の頭上に美しい雪粒が結晶化したのは、マッシュの毛先がぼさぼさだったからでもある。同様に、槙野役もまたかなりくせが強いキャラクター性を明確化するビジュアライズだと考えられる。