俳優の黒沢あすかさんが、長塚京三さん主演の映画『敵』に出演しました。筒井康隆氏の小説を吉田大八監督が映画化した作品で、引退した元大学教授が穏やかな老境の日々を送るも、突如やって来る「敵」に翻弄される姿を描いた異色作。黒沢さんは、主人公の亡き妻役を演じています。

黒沢あすか
黒沢あすか
 黒沢さんは3人の息子たちの子育てや、つらく長い更年期を終えた50代の今、自分自身を俳優としてのリスタートの時期と捉え、『敵』に対して「全身全霊で臨めた」と述懐。結婚20周年を迎え、支えてくれた夫からも精神的に自立できたそうで、とても「充実している」と言います。お話を聞きました。

◆「夫とはいえ羨ましかった」念願の吉田大八作品

『敵』メインスチール
ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
――2024年の東京国際映画祭でも注目を集めた本作ですが、長塚京三さん演じる主人公の引退後の丁寧な暮らしが、得体の知れない敵のせいで崩れていく展開の映像表現が凄まじかったですね。

黒沢あすか(以下、黒沢):タイトルの「敵」とは、本人が引き寄せてることなのか、それとも誰かに仕組まれたものなのか。目に見えない運命と言っていいのかどうかわかりませんが、主人公は何かに仕組まれ引き寄せられてしまっているのかもしれないと、映画を観ながらそういう気持ちにさせられましたね。2度観たのですが1回目と2回目で印象がまるで違いました。

――この作品に関わっての感想はいかがですか?

黒沢:まず『敵』の“住人”になれたこと、それと吉田大八監督とご一緒できたことが嬉しかったです。吉田監督とはどうしてもご一緒したかったんです。夫(梅沢壮一)が特殊メイクアップアーティストとして『桐島、部活やめるってよ』(2012)で先にご一緒していて。あの作品を観たときに夫に「よかったね」と拍手すると同時に、吉田監督の作品に「先越されちゃった!」っていう思いがこみ上げてきたんです(笑)。