いずれにせよ「地方創生」の一丁目一番地としては、政府側が訴えてきたように、これまでの勘や経験に頼るのではなくて、データに基づいた政策立案をしましょうね、というのが共通認識になってきています。

ーーそれはなんかちょっと、希望的な話もありそうですね。

小笠原  市役所とか県庁の中にあったデータを市民が見られるようになることへの緊張感はすごいことだと思うんですよ。今までは「こんなデータ、誰も知らないや」と見過ごされても何の問題もなかったものが、突然ポンと社会に公開されていて、誰が見ているかもわからない。市議さんや県議さんらが、議会でデータを引用して質問したら、それに役所の皆さんは答えられなきゃいけないわけです。そういうデータ活用が広がってきたのが、この10年の成果ならば、それが「2.0」にバージョンアップして何が始まるんだろうという、期待と不安が入り混じった状況です。

ーーそんなこんなでの連載再開。しかし、希望よりも問題が山積しています。例えば、以前の連載では能登町を取材しましたが、その後能登半島を大きな災害が襲いました。

小笠原 能登町については私も、かなり心配しています。最近もいくつかニュースで報じられましたけれど能登の地震からの避難を経て「もう地元には戻らない」という方が出てきているんですよね。調査によると4割余りの人がそう思っているとの回答があったそうです(出典引用:「石川県外の公営住宅避難者 今後の居住地 4割余が「戻らない」」 NHK NEWS 2025年2月2日 11時09分配信 www3.nhk.or.jp/news/html/20250202/k10014710151000.html)。 そうすると、被災して避難した人たちが復興後に地元に戻って来ることを期待していた方々が、外に出ていったまま戻らない現実を、どう受け止めるといいのか。

 もちろん「地元に戻りたい」という方々の気持ちはちゃんと汲まなきゃいけません。ですが、東日本大震災でも起こったように、元々人口が減っていて地域が衰退している中での大災害は、地域社会にとどめを刺しかねないという重い現実も、我々は理解しておかねばなりません。