ーー以前も「地元から追い出されている」という地方の若者の感覚をテーマにした回がありました。これは、連載を通して共通認識となっていましたね。

小笠原  2025年現在、団塊ジュニア世代や氷河期世代が年齢を重ねてきている中で、婚活の場を作ったり、出産や子育て関連政策を充実させて出生率を高めてみたいな話をしたところで、そもそもすでに分母となる数が減っているわけですから、そう容易に出生数が増えるはずがないんですよ。掛け算なので。

 それだけでも、この10年間で大きなチャンスを逃した日本が「これからどうするんだろう?」という状態の中で、「地方創生2.0」の号令の元、右向け右状態でどうにかしようとしてるのだとしたら、滑稽にすらみえてきます。

ーー確かに、人口減社会の中で◯◯市だけがなぜ増えたのか、みたいな記事が「地方創生」の成功例としてとりあげられガチです。

小笠原 まだみんな「人口を増やしたい」って騒いでいますよね、あちこちで。石破さんが「楽しい国 日本」と言って、マスコミから叩かれていましたけど、ウェルビーイングでなんとかしようという形で動いてるのは、担当のお役人の置かれた厳しさといいますか、リアリティを感じるなって気がします。

 もう、目覚ましく人口が増えていくとか、地方が繁栄するってことは、ないはずなんですよ。だから諦めてもそこに絶望しないでね、とは言いたいんです。人口が減って既存のコミュニティが統合されていくような近未来はあって、その中でもいかに自分が楽しく過ごしていけるかが、若者には求められているんだろうという気がしますよね。
(参考:国土交通省観光庁「「楽しい国 日本」の実現に向けた 提言について」kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/kankotf_dai19/siryou6.pdf